研究課題/領域番号 |
19H01025
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
烏山 一 東京医科歯科大学, 高等研究院, 特別栄誉教授 (60195013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 好塩基球 / 炎症 / アレルギー / 生体恒常性維持 / 生体防御 |
研究実績の概要 |
(1) 皮膚慢性アレルギー炎症抑制における好塩基球の役割と機序解明 私たちのこれまでの研究で、皮膚慢性アレルギー炎症マウスモデルにおいて好塩基球は炎症早期には炎症惹起に、一方炎症後期には炎症抑制に寄与することを見いだしている。炎症後期には好塩基球由来IL-4の作用により生成されたM2マクロファージが炎症抑制に関与することが判明したが、その作用機序はよく分かっていなかった。本年度の研究で、M2マクロファージ欠損マウスを含む遺伝子改変マウスならび各種阻害剤等を用いた解析から、M2マクロファージによる好中球などの炎症性細胞の貪食、死細胞クリアランスが炎症終焉に重要であることが分かってきた。現在、炎症制御の分子メカニズムを明らかにするため、炎症性細胞・死細胞の貪食・クリアランスに関わるM2マクロファージ機能分子の解析を進めている。 (2) 肺の急性炎症制御における好塩基球の役割解明 新型コロナウイルス感染等による肺炎や敗血症などがきっかけとなって重度の呼吸不全をきたすことが大きな医療上の問題となっている。致死率は30-50%と高く、特異的な治療法は確立していないのが現状である。本年度、私たちは肺の急性炎症マウスモデルを解析した結果、予想外なことに好塩基球除去により炎症が増悪することを見いだした。すなわち、好塩基球が炎症惹起ではなく炎症制御に寄与していると考えられる。以前の研究でIL-4投与によって肺炎症が軽減することが報告されていることを鑑みて、好塩基球由来IL-4が炎症制御に関与している可能性について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、好塩基球はアレルギー炎症を引き起こす悪玉細胞としての一面が強調されてきたが、本研究により好塩基球が、皮膚慢性アレルギー炎症ならびに肺の急性炎症モデルにおいて炎症制御に寄与しているという善玉細胞としての側面が明らかになってきた。好塩基球による炎症制御のメカニズムをさらに解析することで、炎症制御の新たな治療戦略の構築が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1細胞トランスクリプトーム解析や各種遺伝子改変マウスを駆使して、好塩基球による皮膚慢性アレルギー炎症ならびに肺急性炎症の抑制・制御メカニズムを細胞レベル・分子レベルで明らかにしていく。
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