前年度までの研究で、アトピー性皮膚炎マウスモデルのIgE依存性皮膚慢性アレルギー炎症において炎症後期では、好塩基球が炎症抑制作用を示すこと、好塩基球の産生するIL-4が炎症性単球に作用して炎症抑制性のM2マクロファージへと分化することで、M2マクロファージが好中球など炎症性細胞を貪食・処理することで炎症終焉に導くことが分かってきた。そこで、本年度の研究ではその分子メカニズムを解明するために皮膚炎症部位に浸潤している個々の細胞に対して高感度の1細胞トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、好塩基球由来のIL-4の作用を受けた炎症性単球がM2マクロファージへと分化する過程でエフェロサイトーシス(アポトーシス細胞の貪食)に関与する分子群の発現が亢進することを見いだした。M2マクロファージ分化に障害のあるマウスでは、アポトーシスに陥った好中球のエフェロサイトーシスが効率良くおこなわれないため、皮膚病変部に好中球が異常に集積することがわかった。これらの好中球は2次的ネクローシスをひきおこし炎症惹起因子を分泌することで炎症を増悪させることが強く示唆された。以上のことから、IgE依存性皮膚慢性アレルギー炎症において炎症後期では、好塩基球由来IL-4 → 炎症性単球からM2マクロファージへの分化 → エフェロサイトーシスによるアポトーシス好中球の除去というカスケードが作動することで効率的に炎症が抑制されて炎症が終焉に向かうことが明らかとなった。
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