研究課題
本研究課題では自己免疫性関節炎(SKG)モデルを用いて、インターロイキン-17(IL-17)を産生する関節炎惹起性T(Th17)細胞の認識する新規自己抗原を同定し、関節炎局所に局在するTh17細胞と炎症組織細胞による時空間的な相互作用と炎症増幅・慢性化機構の分子基盤を細胞・分子レベルで明らかにする。本年度、自己免疫疾患発症に関わる炎症性Th17細胞のT細胞受容体(TCR)のレパートリー解析およびPathogenic Th17細胞の機能制御に関わる炎症性サイトカインの解析に取り組んだ。自己免疫性関節炎局所に浸潤したTh17細胞をセルソーターで分取し、TCRα鎖、TCRβ鎖、それぞれのCDR領域のシークエンス情報および頻度を次世代シークエンサーで取得し、バイオインフォマティクス解析をおこなった結果、関節炎惹起性Th17細胞に特異的な配列情報を見いだした。また、Th17細胞の機能維持に重要であると報告されている炎症性サイトカインの一部の意義をSKGモデルで解析したところ、これまで確立されている概念に反してPathogenic Th17細胞の関節炎惹起能付与に対する影響が小さいことを見いだした。これらは、関節炎惹起性Th17細胞の抗原特異性およびPathogenic Th17細胞の制御機構の分子基盤を理解するための重要な研究成果であり、今後の研究展開に必要な基礎となる。
2: おおむね順調に進展している
本課題の目標は、関節炎惹起性T(Th17)細胞の認識する新規自己抗原の同定および関節炎局所に局在するTh17細胞と炎症組織細胞による時空間的な相互作用と炎症増幅・慢性化機構の分子基盤を細胞・分子レベルで明らかにすることであり、本年度、順調な研究進捗が得られた。特に、関節炎惹起性Th17細胞の特異的なTCR情報が得られたことから、これらT細胞と自己免疫性関節炎の関わりについて解析が可能になり、今後の研究進展が期待できる。また、Pathogenic Th17細胞の制御機構に関して、これまでの定説を覆す可能性のある実験結果を得ており、新しい概念の確立に向け研究展開を進めていく。
本年度、31年度の研究計画を引き続きおこなうとともに、新しく以下のサブプロジェクトに取り組む。384ウェルプレートを用いたシングルセルTCRレパートリー解析の手法を立ち上げ、関節炎惹起性Th17細胞の発現するTCRのクローナリティについて解析を進める。また、同一個体の滑膜組織に共局在するTh17細胞と制御性T細胞のTCRレパートリー解析の準備を進める。この解析が実現すれば、Th17細胞、制御性T細胞の自己抗原認識機構とTCRの重複性の有無など研究の進展が期待できる。炎症滑膜組織で炎症の増悪・慢性化を起こす機構の一つとして、細胞死関連プログラムに着目しており、特に、Necroptosis、PyroptosisのSKG関節炎に果たす役割について解析をおこなう。これまでに、これら細胞死の鍵となる分子Ripk3とGsdmd欠損マウスを作製しており、SKG系統にバッククロスをおこない関節炎発症の有無および重症度について評価をおこなう。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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