研究課題/領域番号 |
19H01026
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣田 圭司 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (90631250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Th17細胞 / SKGマウス |
研究実績の概要 |
本研究課題では自己免疫性関節炎(SKG)モデルを用いて、インターロイキン-17(IL-17)を産生する関節炎惹起性T(Th17)細胞の認識する新規自己抗原を同定し、関節炎局所に局在するTh17細胞と炎症組織細胞による時空間的な相互作用と炎症増幅・慢性化機構の分子基盤を細胞・分子レベルで明らかにする。本年度、同一個体の滑膜組織に共局在するIL-17-eGFP+ Th17細胞とFoxp3+ 制御性T細胞のTCRレパートリー解析を可能にするIL-17-eGFP Foxp3-hCD2レポーターSKGマウスの実験モデルを構築した。自己免疫性関節炎と自己免疫性脳脊髄炎モデルにおいて、Pathogenic Th17細胞の誘導因子、エフェクタープログラムが異なることが予想されたため、IL-17レポーター系統を用いて実験をおこない、標的臓器に浸潤したTh17細胞の臓器特異的なエフェクタープログラムおよび特徴的な表面マーカーを同定した。炎症滑膜組織で炎症の増悪・慢性化を起こす機構の一つとして、細胞死関連プログラムNecroptosis、Pyroptosisに着目しており、これら細胞死の鍵となる分子Ripk3とGsdmd欠損SKGマウスを作製しTh17細胞の分化機構と関節炎発症に対する役割について解析した。予想に反し、T細胞依存性の自己免疫応答にはNecroptosis、Pyroptosis経路は関与しない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目標は、関節炎惹起性T(Th17)細胞の認識する新規自己抗原の同定および関節炎局所に局在するTh17細胞と炎症組織細胞による時空間的な相互作用と炎症増幅・慢性化機構の分子基盤を細胞・分子レベルで明らかにすることであり、本年度、順調な研究進捗が得られた。Th17細胞、制御性T細胞の自己抗原認識機構とTCRの重複性を明らかにできる実験モデルを樹立したことで今後の研究の進展が期待できる。自己免疫疾患特異的なエフェクタープログラムの同定は、新しい免疫学的治療法の標的となる分子の探索につながり、引き続き、それぞれの分子が自己免疫疾患に果たす役割について検証をおこなっていく。Necroptosis、Pyroptosisの自己免疫疾患および慢性炎症性疾患に対する役割は不明であるが、本研究成果により細胞死が関わる自己免疫疾患においても炎症の増悪化に関与しないことを明らかにしたことから、当該分野の理解を含めるのに役立つ研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、これまでの研究計画を引き続きおこなうとともに、新しく以下のサブプロジェクトに取り組む。滑膜組織に共局在するIL-17-eGFP+ Th17細胞とFoxp3+ 制御性T細胞のTCRレパートリー解析を進める。この解析を進めることで、Th17細胞、制御性T細胞の自己抗原認識機構とTCRの重複性の有無などを明らかにする。また、Th17細胞の分化・機能制御に関わるIL-23産生細胞を詳細に解析可能にするIL-23レポーター系統の作製を進め、シングルセルレベルでのIL-23産生細胞の可視化と詳細な誘導因子の同定を目指す。最近、Necroptosis、Pyroptosis 経路のクロストークも注目されており、Ripk3 KO Gsdmd KO SKG系統の作製も進め関節炎発症の有無および重症度について評価をおこなう。
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