研究課題
本研究課題では自己免疫性関節炎(SKG)モデルを用いて、インターロイキン-17(IL-17)を産生する関節炎惹起性T(Th17)細胞の認識する新規自己抗原を同定し、関節炎局所に局在するTh17細胞と炎症組織細胞による時空間的な相互作用と炎症増幅・慢性化機構の分子基盤を細胞・分子レベルで明らかにする。本年度、同一個体の滑膜組織に共局在するIL-17-eGFP+ Th17細胞とFoxp3+ 制御性T細胞のTCRレパートリー解析を進め、Th17細胞と制御性T細胞間のTCRは重複せず、これら細胞サブセットは炎症組織内で異なった自己抗原を認識することで機能することが示唆された。IL-23産生細胞をシングルセルレベルで解析可能なIL-23-Venusレポーターマウスの作製に成功し、定常状態では腸管粘膜固有層にIL-23産生細胞が常在することを見いだした。炎症滑膜組織で炎症の増悪・慢性化を起こす機構の一つとして、細胞死関連プログラムNecroptosis、Pyroptosisに着目したが、T細胞依存性の自己免疫応答にはNecroptosis、Pyroptosis経路は関与しないのみならず、関節炎発症・増悪化に対してNecroptosis、Pyroptosis 経路のクロストークも必要でないことを明らかにし、論文発表をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
本課題の目標は、関節炎惹起性T(Th17)細胞の認識する新規自己抗原の同定および関節炎局所に局在するTh17細胞と炎症組織細胞による時空間的な相互作用と炎症増幅・慢性化機構の分子基盤を細胞・分子レベルで明らかにすることであり、本年度、順調な研究進捗が得られた。Th17細胞、制御性T細胞間のTCRの重複性を解析することで、抗原認識機構のみならず細胞間の可塑性に関しても明らかにできる実験結果を得た。信頼性の高いIL-23レポーター系統の作製に成功したことから、今後、IL-23産生細胞の制御機構のみならずIL-23産生細胞が制御するTh17細胞の機能解析に展開可能である。Necroptosis、Pyroptosisおよびそれらのクロストークが自己免疫性関節炎の炎症増悪化には関与しないことを明らかした。これらは、当該分野の理解を進めるのに役立つ研究成果である。
本年度、3年度の研究計画を引き続きおこなうとともに、新しく以下のサブプロジェクトに取り組む。炎症性Th17細胞から得られた特異的TCRを持つトランスジェニックマウス作製をすすめ、炎症疾患のモデルシステムの樹立を目指す。作製したIL-17-eGFP Foxp3-hCD2レポーターSKGマウスを用いて、関節炎局所でのFoxp3+制御性T細胞の役割を解析し、どのように炎症性Tヘルパー細胞を抑制しているのか明らかにする。シングルセルレベルでのIL-23産生細胞の可視化と詳細な誘導因子の同定が可能となるIL-23レポーターマウスの作製に成功したので、Pathogenic Th17細胞の強力な制御機構としてのIL-23産生細胞の細胞動態と制御機構の解析を進める。炎症滑膜組織内にはCCR2+炎症性単球が存在し、Th17細胞と協調的に炎症を増悪化することが示唆されている。炎症局所におけるCCR2+炎症性単球の分化、遊走の細胞動態を解析し、どのようにTh17細胞や周囲の炎症関連細胞と相互作用した結果、関節炎の増悪化に関わるのかを明らかにする。
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