研究課題/領域番号 |
19H01035
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
中村 卓郎 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 部長 (00180373)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / 白血病幹細胞 / 骨髄ニッチ / CRISPR/Cas9スクリーニング / BCL11A / PU.1 / LSD1阻害剤 / HDAC阻害剤 |
研究実績の概要 |
A. AML in vivo定着・進展促進因子の機能遺伝学的スクリーニング Hoxa9とMeis1を発現するマウスAML細胞H9M1とMLL-ENLを発現するME4において、in vivoにおける骨髄定着に必要な因子を同定するために、前年度までにshRNAライブラリーを用いた全ゲノムスクリーニングを実施した。この結果、骨髄定着後に有意に減少する1,144の候補遺伝子に対してsgRNAライブラリーを作製し、CRISPR/Cas9系で二次スクリーニングを実施した。4種の候補遺伝子を同定し、現在検証実験を進めている。
B. AML細胞のエンハンサーランドスケーピング B細胞や赤芽球の分化に重要な転写因子Bcl11aのAMLにおける機能解析を進めた。前年度にBcl11aがPU.1と協調作用を示すことを明らかにしたが、今年度はBcl11a/PU.1の相互作用の標的遺伝子の同定を行った。両者が結合しBcl11aによって発現が抑制され、さらにLSD1/HDAC阻害剤により発現が低下する遺伝子の中から9遺伝子を同定した。この中でAsb2はフィラミンAの分解を介してBcl11a発現AML細胞の骨髄定着を促進している可能性が示唆された。一方、ヒトAML患者コホートを用いた解析から、BCL11Aの高い発現が不良な予後と相関することが明らかとなり、BCL11A高発現細胞株ではBCL11AのノックダウンやLSD1/HDAC阻害剤の処理により標的遺伝子の発現亢進を介した増殖抑制効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR/Cas9を用いた二次スクリーニングが完了し、AMLの骨髄定着に必要な遺伝子の同定作業が終了した。候補遺伝子の機能実験にやや遅れが生じているが、細胞株や発現ベクターのクローニングは完了しており、研究は着実に進んでいる。また、BCL11AとPU.1の相互作用の解析から、標的遺伝子Asb2が骨髄定着に重要な機能を有する新たな遺伝子として同定されたことは、当初の計画においては予想していなかった新たな発見である。
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今後の研究の推進方策 |
in vivo骨髄定着スクリーニングで得られた候補遺伝子の機能解析を進める。これに加えて、BCL11Aの標的遺伝子で骨髄定着に重要な役割を担っていることがわかったASB2の機能解析もこれに加える。一方、Trib1に代表されるHoxa9のMeis1以外の協調因子のAML進展における役割の解析も進めて、白血病の骨髄定着と生体内進展機構に対する理解を深める。
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