研究課題/領域番号 |
19H01039
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 克樹 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70243110)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サイトカイン / マーモセット / マカクザル / 精神疾患 / 脳機能 |
研究実績の概要 |
新生児期の炎症性サイトカイン暴露により引き起こされる行動および脳機能異常を定量的に評価し、健常個体と比較することにより、その異常の原因を明らかにし、精神疾患モデルとして確立する。具体的には、1)特に前頭前野機能を必要とする認知課題の成績、2)アイコンタクトと眼球運動、3)聴覚驚愕反応を用いたPPI、4)サーカディアンリズムと活動量、5)ECoGや聴性定常脳波(ASSR)の周波数成分、6)MRIを用いた形態画像および拡散強調 (DTI)画像の発達的変化、 7)MRIを用いた機能的ネットワーク、8)PETを用いた前頭前野の活動とドーパミン系の活性度を定量化し、健常個体と比較することを計画している。また、同種他個体と対面する場面を設定して出会い場面における他個体に対する社会行動も 評価する。 2020年度も研究協力者との連携体制を堅持しながら研究を進めた。マカクザルに関しては、産期に合わせた計画的なサイトカイン暴露が必要であるため、飼育担当部署と連携を取りながらアカゲザル1頭に新たにサイトカイン暴露を実施することによりモデル作出を実施した。 マーモセットを対象として、前頭前野機能を必要とする認知課題の実施、ECoGや聴性定常脳波(ASSR)の周波数成分、MRIを用いた形態画像および拡散強調 (DTI)画像の発達的変化を重点的に解析した。マーモセットに関しては、集団内における行動異常を評価するため家族飼育が可能なケージを導入し、集団のビデオ録画や音声録音のビッグデータを収集し、集団内における社会行動の解析を進める環境を整備した。 またマカクザルにおいても認知課題の実施、ECoGや聴性定常脳波(ASSR)の周波数成分の解析を進めた。 データ解析や解釈に関しては、新潟大学の那波宏之教授、東北大学の川島隆太教授、新潟大学の伊藤浩介准教授と京都大学の鴻池菜保助教にアドバイスや協力を受けながら進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力者との連携体制が整備でき、今後の研究における検査・解析項目や体制が整った。さらに研究協力者とECoGおよび脳波計測に関する計測系を確立し、疾患モデルマーモセットにおいても聴性定常脳波(ASSR)等の聴覚応答性を記録し、健常個体を比較した。また、令和3年度から社会行動の専門家を雇用することにより研究を飛躍的に推進する体制を整えた。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大防止のための出勤自粛(テレワーク)などにより、予定していた動物実験が行えず、マーモセット2頭とアカゲザル1頭で新たにサイトカイン暴露を行いモデル作出を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新生児期の炎症性サイトカイン暴露により引き起こされる行動および脳機能異常を定量的に評価し、健常個体と比較することにより、その異常の原因を明らかにし、精神疾患モデルとして確立する。具体的には、1)特に前頭前野機能を必要とする逆転学習課題の成績、2)アイコンタクトと眼球運動、3)サーカディアンリズムと活動量、4)ECoGや聴性定常脳波(ASSR)の周波数成分、5)MRIを用いた形態画像および拡散強調画像(DTI)を定量化し、健常個体と比較する。また集団のビデオ録画や音声録音のビッグデータに基づき社会行動の評価系を確立する。 2021年度も研究協力者との連携体制を堅持しながら研究を進める。これまでにサイトカイン暴露をした個体に関しては、同腹子と一緒に、可能な限り1ヶ月に1度行動をビデオ撮影して記録を残している。これを2021年度も継続する。また、各個体は誕生日前後に形態MRI画像およびDTIデータを取得している。これも継続する。すでに3頭の逆転学習課題の成績を取得している。引き続き個体数を増やす。また、2頭のアイコンタクトのデータを取得している。これも今後継続する。現在、3頭からECoGおよび聴性定常脳波のデータを取得した。解析を進めるとともに、個体数を増やす。 昨年度は、新型コロナウイルスの感染拡大や非常事態宣言のため、新たにサイトカイン暴露ができた個体が1頭と予定数を達成できなかった。今年度はさらに各々の種で3頭ずつ増やしたい。 データ解析や解釈に関しては、和歌山県立医大の那波宏之教授、東北大学の川島隆太教授、新潟大学の伊藤浩介准教授と京都大学の鴻池菜保助教にアドバイスや協力をもらいながら進める。
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