統合失調症等の精神疾患の原因や治療法は不明である。その一方で、母体の炎症が胎児にも大きな影響を及ぼし、発達障害や精神疾患の子どもが生まれる確率が高くなることが知られている。ヒトの精神疾患の原因の一つとして考えられている炎症性サイトカイン暴露によって、サルに行動異常が誘発されることが確認できた。炎症性サイトカイン暴露によって引き起こされる行動および脳機能異常を定量的に評価し、健常個体と比較することにより、その異常の原因を明らかにし、精神疾患モデルとして確立する。 新生児期の炎症性サイトカイン暴露により引き起こされる行動および脳機能異常を定量的に評価し、健常個体と比較することにより、その異常の原因を明らかにし、精神疾患モデルとして確立する。具体的には、以下の項目を実施した。1)前頭前野機能を必要とするGO/NOGO課題の成績を健常個体と比較したところ、成績が悪化している傾向が認められなかった。逆転学習課題では成績が悪化する結果であったため、その差の原因を検討した。2)活動量は一過性に非常に増加した。しかし、時間が経つとその傾向は弱まった。3)ECoGや聴性定常脳波(ASSR)の周波数成分を分析した。ASSRでは、健常個体とくらべてEGF群ではEvoked power/Phase-locking factorの有意な増加がみられた。Induced powerは変化が認められなかった。一方、同種他個体の鳴き声に対する応答は健常個体と異なるものであった。聴覚系の異常が示唆された。4)MRIを用いた形態画像および拡散強調画像(DTI)を、健常個体と比較したが、これまでに顕著な差は認められなかった。 和歌山県立医大の那波宏之教授、東北大学の川島隆太教授、京都大学の鴻池菜保准教授にアドバイスをもらいながら結果をまとめている。
|