2022年度の前半は、MRS(Magnetic Resonance Spectroscopy)フィードバックを用いた実験に必要なヒトを対象とした基礎データの取得および解析を継続した。また、モデル動物を対象としたMRS信号の生理学的機序を調べる研究も引き続き進めた。
ヒトを対象とした実験では、視覚機能に加え運動機能に注目した実験を行った。昨年度に確立した指運動の系列学習課題を用い、このパラダイムを複数日の訓練実験に拡張した。TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)による脳一時運動野の興奮/抑制状態の変化と系列運動学習の強化や固定の関係を引き続き検討するとともに、SONYコンピューターサイエンスラボラトリーと共同で外骨格ロボット等を用いた受動的運動パラダイムを確立し、すでに一度学習した運動記憶の再活性化が運動記憶のさらなる強化に貢献するか検討した。これらの結果は2022年のMotor Control研究会で発表した。また視覚の訓練においても、MRSによる興奮/抑制状態の時間変化とTMSによる興奮/抑制状態の時間変化を比較した研究結果をScientific Reports誌に投稿し受理された(2023年4月にウェブサイト上で出版)。さらに、興奮/抑制状態の視覚学習に対する役割を調べた行動実験の結果が、iScience誌に掲載された。
2022年度の後半も引き続き脳の興奮/抑制状態に関連した視覚および運動学習の研究を継続した。コロナ禍による専門技術者の入国制限やロシア・ウクライナ戦争に関連する電子機器・ヘリウムガスの不足に伴い、超高磁場(7テスラ)MRIの稼働が年明けまでずれ込んだが、稼働にこぎ着け、リアルタイムMRSシステムが実装可能になった。現在データ計測を急ピッチで進めている。
|