研究課題/領域番号 |
19H01045
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 九州大学, 医学研究院, 教授 (40183305)
|
研究分担者 |
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
磯部 紀子 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60452752)
萬谷 博 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (20321870)
海田 賢一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 准教授 (40531190)
松下 拓也 九州大学, 大学病院, 講師 (00533001)
緒方 英紀 九州大学, 大学病院, 助教 (90778838)
渡邉 充 九州大学, 医学研究院, 助教 (30748009)
中村 優理 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40822375)
藤井 敬之 九州大学, 大学病院, 医員 (30822481)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 多発性硬化症 / 慢性炎症性脱髄性多発神経根炎 / NF155 / PlexinD1 / 抗核抗体 |
研究実績の概要 |
令和元年度は下記の研究成果を得た。 脱髄性疾患における遺伝環境リスク調査に関して、MS患者および健常者を対象に米摂取量の聴取とフローサイトメトリによる末梢血免疫細胞のフェノタイピングを行った結果、多変量回帰解析では米摂取量がエフェクターCD4陽性T細胞と相互作用し、MSリスクを下げることが見出された(Sakoda et al., Mult Scler Relat Disord 2020)。 また、IgG4抗NF155抗体陽性CIDP患者髄液サイトカイン解析から、CD4陽性T細胞、特にTh2細胞が活性化し、HLAタイピングでは同患者軍において強いHLAクラスII拘束性が存在することを見出した。(Ogata, Zhang, et al. Ann Clin Transl Neurol 2019, Ogata et al. J Neuroimmunol. 2020)。 さらに私たちは、MS患者血清中の中枢神経特異的抗核抗体(CNS-specific ANA)の保有率が、視神経脊髄炎患者や健常人と比較して有意に高く、HLA-DRB1*15:01と関連していることを見出した。また、55 kDaの核内抗原を標的とするCNS-specific ANA陽性のMS患者は、陰性の患者と比較し二次進行型MSの割合が高く、重症度が高い傾向にあったことから、同抗体が疾患の代用マーカーとなる可能性が示唆された(Fujii et al., JNS 2020)。一方、神経障害性疼痛患者由来の抗Plexin D1抗体のマウス髄腔内に投与による受動免疫動物モデルの作成に成功した(Fujii et al., Neuroimmunol Neuroinflammation. in revision)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・16例の未治療MS患者と45例の健常者を対象に食事摂取についての自己回答アンケートを行い、1日の米摂取量の推計を行った。同時にフローサイトメトリ法により末梢血中のαβおよびγδT細胞のフェノタイピングを行いその比率を比較した。多変量回帰解析では米摂取量がエフェクターCD4陽性T細胞と相互作用し、MSリスクを下げることが見出された。 ・IgG4抗NF155抗体陽性CIDPでのT細胞の寄与および免疫遺伝学的背景を明らかし、公表することができた。現在、引き続き自己抗体(B細胞)のエピトープの同定を行っている。また、抗体測定法の開発も継続している。T細胞エピトープや、新規動物モデルの開発には至っていない。 ・自己抗体未同定のMSを対象とした特異的自己抗体の探索の結果、MS患者血清中にCNS-specific ANAを同定し、CNS specific-ANAの出現に関連する遺伝リスクとしてHLA-DRB1*15:01が関連していることを明らかにできた。また、病態特異的な自己抗体の作用を再現する病態モデルとして、抗Plexin D1抗体受動免疫神経障害性疼痛モデルマウスの作成に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
・MSの環境要因としての米摂取量と免疫細胞分画の関連を引き続き検討するとともに、より定量的指標としてMRI画像所見との関連性を検討する。 ・抗NF155抗体測定については継続的に行っており、2019年度までに100例を超える抗NF155抗体陽性CIDPを同定している。これは世界的にみても類をみない規模のコホートである。今後は、抗NF155抗体が共通のエピトープを有するのか多数の症例で検証する。エピトープが異なる場合はそれが臨床に影響を及ぼしているかを調査する。 ・一次進行型MSを対象とした特異的自己抗体を探索するとともに、特異的自己抗体の同定を行う。抗Plexin D1抗体受動免疫神経障害性疼痛モデルマウスの病理組織学的解析を行い、抗Plexin D1抗体による神経障害性疼痛の発症メカニズムを分子レベルで解明していく。
|