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2020 年度 実績報告書

AKAP-PKA結合阻害剤による新規PKA制御法の疾患治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 19H01049
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

内田 信一  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50262184)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードprotein kinase A / AQP water channel / AKAP / 尿崩症 / 結合阻害薬
研究実績の概要

腎臓集合管におけるバゾプレシン2型受容体(V2R)の機能喪失型変異により発症する先天性腎性尿崩症の新規治療戦略として、protein kinase A(PKA)とPKAのアンカータンパク(AKAP)との結合阻害に着目したところ、障害されたV2Rを介さずに、尿からの水再吸収に必須であるPKA/AQP2水チャネルシグナルを直接活性化する低分子化合物を発見できた。細胞内には数十種類のAKAPが存在するが、どのAKAPが尿濃縮に最も関わるかは知られていない。本研究では、我々が独自に保有するAKAP-PKA結合阻害剤を出発点として、まずその詳細な作用機序を明らかにすることで新たなPKAの制御機構を解明し、同時に従来のGPCRアゴニストやホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬などのPKA活性化剤を、効力と特異性で凌駕する治療薬を創出できる可能性を探る。
AKAP-PKA結合阻害作用を持つ低分子化合物FMP-API-1/27の腎臓集合管における標的を同定するために、RNA-Seqやプロテオミクス解析で同定された腎臓集合管に発現する主要なAKAP-PKA結合の組み合わせを免疫沈降法により評価した。FMP-API-1/27がAKAP XとPKA-RII subunitとの結合を特異的に阻害していることを明らかにした。そこでAKAP Xノックアウトマウスを作成したところ、尿浸透圧が低下しバゾプレシンへの反応性も失われていた。
腎臓におけるAKAP-PKAを標的にしたPKAシグナルの解析手法は、他臓器においても応用が可能である。すでに、脂肪細胞のPKAを活性化可能な化合物を同定し、高脂肪食肥満モデルマウスにおいて、抗肥満や耐糖能異常改善効果を発揮することを確認している。尿崩症以外のPKAが関与する多様な疾患においても新たな病態の解明を進め、治療戦略(薬)を提示する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

腎臓集合管のPKA機能を解析することで、今までにない強力なAQP2制御機能を有するAKAP Xを同定することができた。AKAP Xをノックアウトしたマウスは尿浸透圧が低下しており多尿となった。さらに、バゾプレシン反応性が高度に低下し、尿濃縮作用が障害されていた。今まで数々のAKAPノックアウトマウスが作成されてきたが、これほど尿濃縮障害がみられたAKAPノックアウトマウスは初めてであり解析する意義が大きい。AKAP Xノックアウトマウスにおいては、AQP2の活性化に最も重要であるS256のリン酸化が障害されていた。S256は、AQP2のmaster regulatorとして認知されており、PKAによって直接リン酸化制御を受ける。AKAP X - PKA複合体がAQP2周囲に存在できなくなり、PKAによるAQP2のリン酸化が障害されたことでAQP2の膜輸送や水透過性が低下したと考えられる。薬剤開発においては、リード化合物であるFMP-API-1/27の誘導体展開と類似構造を指標としたin silicoのスクリーニングを行った。マウスへの経口投与により尿量減少効果を発揮する化合物の開発に成功し特許出願した。
褐色脂肪培養細胞を用いて、リード化合物FMPAPI-1/27を誘導体展開した化合物や類似構造を持つ化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、化合物Xを同定した。化合物Xは、腎臓集合管ではPKA活性化効果が無かったが、褐色脂肪培養細胞のPKA基質をリン酸化した。化合物Xを高脂肪食に混ぜて投与すると、抗肥満や耐糖能異常改善効果が得られ、脂肪細胞の特定のPKA基質の発現量とリン酸化に変化をもたらしていることが明らかとなった。化合物Xが作用するPKA基質を同定し、AKAPとの関連を解析している。

今後の研究の推進方策

腎臓集合管においては、AKAP-PKA機能の生体内での役割とその病態への関与について順調に解明が進んでいる。AKAP Xノックアウトマウスにおいて尿濃縮が障害されるメカニズムを詳細に解析する。
脂肪においては、化合物Xと既存薬との違いも明らかにする。脂肪細胞では交感神経刺激によってβ3受容体/cAMP/PKAシグナルが活性化すると抗肥満効果が得られることが知られているが、β3受容体アゴニストであるミラベグロンは、選択性の低さから心臓へも作用し、β1受容体を介した血圧上昇などの副作用も併せ持つため実用化には至っていない。化合物Xはミラベグロンとは異なり血圧上昇作用が無く、褐色脂肪除去マウスでも抗肥満効果が残存するなど、既存薬とは異なる効果も発揮する。化合物Xが生体内で及ぼす作用を代謝ケージなども用いて解析する。
腎臓や褐色脂肪以外にもPKAが関与する疾患の解析を並行して進める。薬剤の有効性においては、引き続きそれぞれの病態モデルマウスを用いて検証し、非臨床での有効性のエビデンスを構築していく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 【水電解質】先天性腎性尿崩症の治療薬開発の現状2020

    • 著者名/発表者名
      安藤 史顕, 内田 信一
    • 雑誌名

      日本腎臓学会誌

      巻: 62 ページ: 798-802

  • [学会発表] Development of Novel Therapeutic Strategies for Congenital NDI and Other PKA-Related Diseases2020

    • 著者名/発表者名
      Ando F, Uchida S
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
  • [産業財産権] 化合物又はその塩、医薬、抗利尿薬及びプロテインキナ-ゼA活性化薬2020

    • 発明者名
      内田 信一、影近 弘之、安藤 史顕、森 修一
    • 権利者名
      国立大学法人東京医科歯科大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2020-097124

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公開日: 2021-12-27  

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