研究課題/領域番号 |
19H01053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧島 秀樹 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40402127)
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研究分担者 |
村松 秀城 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (00572570)
前田 高宏 九州大学, 医学研究院, 教授 (00791972)
宮崎 泰司 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (40304943)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨髄不全症候群 / 再生不良性貧血 / 発作性夜間血色素尿症 / 胚細胞性変異 / 体細胞性変異 / 骨髄異形成症候群 |
研究実績の概要 |
令和2年度(2020年度)には、前年度に引き続き、骨髄不全症候群において小児から成人まで全年齢の症例にわたり胚細胞性変異および体細胞性変異の検索およびその病的意義の検証を行った。本研究の目的である、骨髄不全症の原因の背景にある分子機構の解明とバイオマーカー候補の抽出を行い、詳細な臨床情報との関連を比較検討することにより統合的に解析を進めた。その結果、国際共同研究により網羅的なゲノム解析を1000例以上の症例において解析することが可能となり、機械学習解析技術を併せて用いたところ病理学的所見と体細胞性変異との全く新しい関連性を見出すことが可能となった。これにより、ゲノム異常と細胞形態異常の新規組み合わせが疾患フェノタイプと関連することおよび予後を規定することを見出し報告した(Nagata et al. BLOOD. 2020)。また、先天性の骨髄不全症の一病型の原因遺伝子として極めて重要なRUNX1とコヘシン複合体変異が高頻度に合併することを見出した。そこで、それらの組み合わせをもつマウスモデルを作成し、ATACシーケンス、Hi-Cなど最先端技術を駆使し解析したところ、これらの異常が染色体の三次元構造を劇的に変化させることを解明し報告した(Ochi et al. Cancer Discov. 2020)。さらには、再生不良性貧血・発作性夜間血色素尿症・骨髄異形成症候群においてあまねく認められるTET2変異に関しては、陽性症例に対する新規治療薬候補としてアスコルビン酸が治療効果を示す可能性を示し、マウスモデルを用いて検証し報告した(Guan et al. Commun Biol. 2020)。以上の研究実績に加え、本年度には骨髄不全症の発症を予測する目的で健常者1万人以上を対象にゲノム解析を進めており、DNMT3A、TET2および特定のコピー数異常が候補異常として抽出されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度および二年目において、骨髄不全症に関わる極めて重要なゲノム異常に関して新規の病理学的・臨床的意義の発見およびその検証を行い報告してきた。さらには、国際共同研究により、予想より多くの症例を検討することが可能となり、これまでに知られていなかった細胞形態異常とゲノム異常の新規関連性を明らかにすることが可能であった。また、ゲノム解析に、機械学習、最先端のエピゲノム解析を加えることによって、全く新しいコンセプトにより、発症に関わるメカニズムを説明することが可能となった。現在、解析症例数は数千例にのぼり、本年度以降も、骨髄不全症に関わるゲノム異常に関してさらに大きな成果をあげることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究成果を踏まえ、骨髄不全症の発症・病型・予後などに関わる胚細胞性変異および体細胞性変異の検索・検証を引き続いて行う。胚細胞性変異に引き続いて獲得される体細胞性変異のパターンに関して、小児および成人における症例を網羅的に解析することにより、新規の異常の発見とその臨床的・病理学的意義の解明を進める。具体的には、標的シーケンス・全エクソームシーケンス・全ゲノムシーケンスにより、これまで重要とされているドライバー変異に合併する遺伝子異常を明らかにするのみならず、新規ドライバー遺伝子の検索を行う。当初より計画した以上に、すでにマウスモデルを用いた解析、エピゲノム解析、機械学習を駆使した統合的な解析を行って、骨髄不全症に関する未知の発症メカニズム解明および新規治療法開発につながる成果が得られており、ゲノム異常から派生する下流の病的異常についても引き続き解析を行う。以上により、骨髄不全症の原因・治療効果・生存期間などに関わるバイオマーカーを胚細胞性変異・体細胞変異およびそれらの組み合わせから抽出し意義を検証する。
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