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2022 年度 実績報告書

骨髄不全症候群における胚細胞変異および体細胞変異の解明に基づく新規治療開発

研究課題

研究課題/領域番号 19H01053
研究機関京都大学

研究代表者

牧島 秀樹  京都大学, 医学研究科, 准教授 (40402127)

研究分担者 村松 秀城  名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (00572570)
前田 高宏  九州大学, 医学研究院, 教授 (00791972)
宮崎 泰司  長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (40304943)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード骨髄不全症候群 / 再生不良性貧血 / 骨髄異形成症候群 / 胚細胞性変異 / 体細胞性変異 / 発作性夜間血色素尿症 / クローン性造血 / 急性骨髄性白血病
研究実績の概要

骨髄不全症のうち急性骨髄性白血病への進展を最も効率に起こす予後不良な疾患は骨髄異形成症候群である。研究代表者は分担者と共同で骨髄異形成症候群における胚細胞変異および体細胞変異を網羅的に解析することにより、様々な遺伝子変異のうち、DDX41変異が最も高頻度に認められることを明らかにした。2万例以上の遺伝的背景を一致させた我が国のバイオバンク登録の健常者の解析と併せることにより、これまで不明であった先天性のリスクについて正確に定量することが可能となった。それにより、我が国における先天性の骨髄異形成症候群の原因のアレルが明らかとなり、さらにはそのキャリアーにおける将来の骨髄腫瘍発症リスク(浸透率)を世界で初めて算出した。DDX41胚細胞変異が陽性の骨髄異形成症候群は血球減少や骨髄不全症が特徴であるが、一方で変異陰性例に比較して有意に白血病進展頻度が高い傾向にあった。しかも、ナンセンスとフレームシフトのアレルは白血病化に関連していたが、ミスセンスアレルはその傾向を示さないことも解明された。さらには、セカンドヒットの体細胞変異は半数以上の症例で認めたが、そのほかにCUX1やGNASなどの体細胞変異が選択されていたが、これまで白血病化に関連し予後不良因子であるFLT3やNRASの変異をDDX41変異例に認めず、よってDDX41変異例は白血病化を起こしやすいにも関わらず予後が良好であることも明らかとなった。DDX41変異例は脱メチル化薬を投与されると予後良好な傾向を認めており、その傾向は造血幹細胞移植を受けた症例においても同様に認められた。以上から、本研究により、骨髄不全症のもっとも予後不良な病型である骨髄異形成症候群における最大の先天性リスクについてこれまで不明であった遺伝学的背景や病理学的・臨床的所見を明らかにすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

骨髄不全症における胚細胞変異および体細胞変異の病態への関与を明らかにするため、これまで構築した国際ネットワークを通じて多くの検体および臨床情報を収集した。特に、再生不良性貧血から進展することもある骨髄異形成症候群は、骨髄不全症のうち最も高頻度に急性骨髄性白血病への進展をひき起こす予後不良な病型である。そこで骨髄異形成症候群における胚細胞変異に基づく先天性リスクを網羅的に解析することにより、様々な遺伝子のうち、DDX41の胚細胞変異が最も高頻度に認められることを明らかにした。そこで、それぞれのDDX41変異について、2万例以上の遺伝的背景を一致させた我が国のバイオバンク登録の健常者の解析結果と比較することにより、DDX41変異のリスクはおよそ10倍であると算出した。以上から、我が国における先天性の骨髄異形成症候群のリスクアレルが初めて明らかとなり、さらにはそのキャリアーにおける将来の骨髄腫瘍発症リスク(浸透率)を計算したところ、90歳までにおよそ半数の方が発症することが明らかとなった。これは家族にDDX41変異陽性患者が発生した場合に偶発的に変異が陽性と診断される健常者にとって極めて重要な情報である。また、病理学的にDDX41胚細胞変異陽性の骨髄異形成症候群は血球減少や骨髄不全症が特徴であること、一方で変異陰性例に比較して有意に白血病進展頻度が高いことも解明した。遺伝学的には、セカンドヒットのDDX41体細胞変異が半数以上の症例で認められるほか、CUX1やGNASなどほかの症例ではまれな体細胞変異が選択され、これまで白血病化に関連し予後不良因子である変異はDDX41変異例にはきわめてまれであった。DDX41変異例は白血病化を起こしやすいにも関わらず予後が良好であることと、これら遺伝学的な特徴との関連が示唆された。また、臨床的にDDX41変異例には脱メチル化薬が有効であった。

今後の研究の推進方策

骨髄不全症における胚細胞変異および体細胞変異の病態への関与を明らかにするため、これまで構築してきた国際共同研究ネットワークを通じて9000例以上の検体および臨床情報を収集してきた。このコホートでは広く全エキソンシーケンスおよび標的シーケンス解析が行われ、上記進捗状況に記載した通り、これまで課題であった予後不良な骨髄不全症である骨髄異形成症候群において原因責任遺伝子異常と正確な発症リスクおよび臨床経過との関連を明らかにしてきた。そのなかで課題となったのは遺伝子異常の機能的な解明および臨床的な意義であり今後以下に関して明らかにしていく。
昨年度までの研究成果を踏まえ、骨髄不全症の発症・病型・予後などに関わる胚細胞性変異および体細胞性変異の検索・検証を引き続いて行う。特に、機能的な側面から胚細胞性変異に引き続いて獲得される体細胞性変異のパターンに関して、小児および成人における症例を網羅的に解析する。具体的には、標的シーケンス・全エクソームシーケンス・全ゲノムシーケンスにより、これまで重要とされているドライバー変異に合併する遺伝子異常を明らかにするのみならず、新規に合併するドライバー遺伝子の検索を行う。当初より計画したごとく、すでにマウスモデルを用いた解析、エピゲノム解析、機械学習を駆使した統合的な解析を行って、骨髄不全症に関する未知の発症メカニズム解明および新規治療法開発につながる成果が得られており、DDX41などのゲノム異常から派生する下流の病的異常についても引き続き機能解析を行う。以上により、骨髄不全症の原因・治療効果・生存期間などに関わるバイオマーカーの候補を胚細胞性変異・体細胞変異およびそれらの組み合わせの中から抽出しその意義を検証する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] クリーブランドクリニック/シカゴ大学/テキサス大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      クリーブランドクリニック/シカゴ大学/テキサス大学
    • 他の機関数
      3
  • [国際共同研究] カロリンスカ大学(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      カロリンスカ大学
  • [国際共同研究] チュラロンコン大学(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      チュラロンコン大学
  • [国際共同研究] キングスカレッジ(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      キングスカレッジ
  • [国際共同研究] ミュンヘン白血病研究所/ハイデルベルグ大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ミュンヘン白血病研究所/ハイデルベルグ大学
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      2
  • [雑誌論文] Germ line DDX41 mutations define a unique subtype of myeloid neoplasms.2023

    • 著者名/発表者名
      Makishima H, Saiki R, Nannya Y, et al., Ogawa S.
    • 雑誌名

      Blood.

      巻: 141 ページ: 534-549

    • DOI

      10.1182/blood.2022018221.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] DDX41-associated susceptibility to myeloid neoplasms.2023

    • 著者名/発表者名
      Makishima H, Bowman TV, Godley LA.
    • 雑誌名

      Blood.

      巻: 141 ページ: 1544-1552

    • DOI

      10.1182/blood.2022017715.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Amplified EPOR/JAK2 Genes Define a Unique Subtype of Acute Erythroid Leukemia.2022

    • 著者名/発表者名
      Takeda J, Yoshida K, Nakagawa MM, Nannya Y, Yoda A, Saiki R, Ochi Y, Zhao L, Okuda R, Qi X, Mori T, Kon A, Chiba K, Tanaka H, Shiraishi Y, et al., Makishima H, Ogawa S.
    • 雑誌名

      Blood Cancer Discov.

      巻: 3 ページ: 410-427

    • DOI

      10.1158/2643-3230.BCD-21-0192.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Clonal hematopoiesis in aplastic anemia and paroxysmal nocturnal hemoglobinuria.2022

    • 著者名/発表者名
      Makishima H.
    • 雑誌名

      Rinsho Ketsueki

      巻: 63 ページ: 1042-1045

    • DOI

      10.11406/rinketsu.63.1042.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The landscape of genetic aberrations in myxofibrosarcoma.2022

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Y, Yoshida K, Halik A, Kunitz A, Suzuki H, Kakiuchi N, Shiozawa Y, Yokoyama A, Inoue Y, Hirano T, Yoshizato T, Aoki K, Fujii Y, Nannya Y, Makishima H, Pfitzner BM, Bullinger L, Hirata M, Jinnouchi K, Shiraishi Y, Chiba K, Tanaka H, Miyano S, Okamoto T, Haga H, Ogawa S, Damm F.
    • 雑誌名

      Int J Cancer.

      巻: 151 ページ: 565-577

    • DOI

      10.1002/ijc.34051.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Sequential acquisition of molecular defects in MDS.2022

    • 著者名/発表者名
      Hideki Makishima
    • 学会等名
      JinLing MDS MPN summit forum 南京 中国.
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 再生不良性貧血・発作性夜間血色素尿に潜むクローン性造血2022

    • 著者名/発表者名
      牧島 秀樹
    • 学会等名
      第84回日本血液学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Germline DDX41 mutations define a unique subtype of myeloid neoplasms.2022

    • 著者名/発表者名
      Hideki Makishima, Yasuhito Nannya, June Takeda, Yukihide Momozawa, Ryunosuke Saiki, et al., Seishi Ogawa.
    • 学会等名
      第84回日本血液学会学術集会
  • [学会発表] Germline DDX41 mutations define a unique subtype of myeloid neoplasms.2022

    • 著者名/発表者名
      Hideki Makishima, Yasuhito Nannya, June Takeda, Yukihide Momozawa, Ryunosuke Saiki, et al., Seishi Ogawa.
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術集会
  • [学会発表] Clinical Impacts of Germline DDX41 Mutations on Myeloid Neoplasms.2022

    • 著者名/発表者名
      Hideki Makishima, Yasuhito Nannya, June Takeda, Yukihide Momozawa, Ryunosuke Saiki, et al., Seishi Ogawa.
    • 学会等名
      64th ASH Annual Meeting and Exposition ニューオリンズ 米国
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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