研究課題
これまで、骨髄不全症のうち骨髄異形成症候群のリスクを高める先天性の素因に関して、多施設国際共同研究により9,000例以上の関連疾患症例を解析し、具体的な原因遺伝子を含め極めて正確な頻度・濃縮率・浸透率を算出し報告してきた。最も大きな成果として、DDX41遺伝子の胚細胞性変異はすべての先天性素因のおよそ80%を占めること、その頻度はおよそ3~8%に上ることを明らかにした。90歳まで他疾患で死亡しなかった場合の生涯発症率はおよそ50%と高率であったが、40歳まではほぼ0%であった。そのため、現在危惧されているのは、すでに複数例が報告されているDDX41変異陽性ドナー由来白血病である。移植ドナーとして造血幹細胞を提供する年齢では発症が10%以下とまれなため、変異を検査しないと陽性の健常血縁者をドナー候補から除外できない可能性がある。そこで、骨髄異形成症候群症例に同種移植を行う場合にDDX41のゲノム解析が必須であることについて、EBMTネットワークの10数か国から参加した移植・遺伝子解析の専門医と検討を重ね、適切な検査法を含めガイドラインを作成した。これにより、胚細胞性変異の検査タイミング・サンプリング方法・シーケンスプラットフォーム・バリアントの抽出ストラテジーについてコンセンサスが得られた。続いて、これまでの研究によりDDX41変異陽性骨髄異形成症候群症例では脱メチル化薬により予後が改善することが明らかとなったため、背景にあるゲノム異常を明らかにする目的で、時系列の検体を検討した。400例以上のアザチチジン治療前と200例以上の治療後のサンプルを標的シーケンスにて検討すると、治療前のDDX41変異が良好な予後と関連していた。興味深いことにDDX41の体細胞性変異のあるクローンが縮小しても治療効果とは関連しなかった。本年度においても骨髄不全症の治療に関する新たな知見が得られた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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