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2019 年度 実績報告書

ユニークな表現型を示すB細胞による新規癌免疫回避機構の解明と制御法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19H01057
研究機関広島大学

研究代表者

大段 秀樹  広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (10363061)

研究分担者 田原 栄俊  広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (00271065)
田原 裕之  広島大学, 病院(医), 助教 (30423354)
田中 友加  広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (90432666)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード癌免疫 / 免疫回避 / B細胞 / 糖鎖抗原 / ネオアンチゲン
研究実績の概要

抗腫瘍免疫機構における多彩なT細胞応答が解明される一方で、B細胞応答の詳細は解明されていない。我々は、ミエロイド系の表現型を示しPD-L1/L2を発現したB細胞(B-1細胞)およびペプチド抗原に応答する抗炎症サイトカインIL-10/TGF-βを産生するregulatory B細胞(Breg細胞)が、T細胞のアロ免疫応答を巧妙に抑制していることを解明した。この発見は、専ら拒絶反応を促進すると考えられていたB細胞の中に、アロ抗原特異的にT細胞を抑制し拒絶を回避させる抑制性B細胞サブセットが存在することを意味する。本研究では、この移植免疫領域のパラダイムシフトが、癌関連ペプチド抗原や糖鎖抗原を標的とする腫瘍免疫機構に該当するか否かを解明し、その制御法を開発する。これまでに、癌糖鎖抗原を認識するB-1細胞を介した抗ネオアンチゲン免疫回避機構を解析するマウスモデルとして、OT-I-CMAHノックアウトマウス、OT-II-CMAHノックアウトマウス、OT-I-Galノックアウトマウス、OT-II Galノックアウトマウスの作製を行った。また、Gal糖鎖抗原発現大腸がん細胞株(CMT93)にネオアンチゲンとしてOVAタンパクを遺伝子導入することで標的消化器癌細胞を作製し得た。これらのモデルを用いて腫瘍細胞の腹腔内移入によるB細胞の抗原提示細胞機能と抗腫瘍T細胞応答性について解析を行った。
臨床解析では、肝細胞癌における糖鎖抗原(NeuGC)の発現と血清中の抗NeuGC抗体値が予後と深く関連することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、癌糖鎖抗原を認識するB-1細胞を介した抗ネオアンチゲン免疫回避機構の研究に必要なマウスモデルの作製を計画通り進めた。標的糖鎖抗原(NeuGCまたはGal)発現とネオアンチゲンとしてOVAを共発現した癌細胞株を選択するにあたり、大腸がん細胞株の糖鎖抗原表出は確認できたが、OVA抗原の同時表出は遺伝子導入による発現誘導が必要であった。遺伝子導入機器の購入によって癌細胞株へのOVA表出を得る事が確認できた。これらのモデルによる機能解析を継続中である。臨床解析は、成果報告(論文投稿)に向けた準備をすすめている。研究計画に沿って順調に進展している。

今後の研究の推進方策

Breg細胞によるHLA由来の抗原ペプチドに対するT細胞の制御機構は、癌ネオアンチゲン由来の抗原ペプチドに対する免疫回避機構にも共通する可能性がある。 この仮説に一致して、癌細胞由来のTRAPに表出するHMGB1がB細胞のTLR2を活性化し(TLR2-MyD88-NF-kB signal pathway)、IL
-10を産生するBreg 細胞へ分化することが最近報告された。我々はHMGB1に強く結合する免疫抑制性オリゴ核酸がB細胞応答にも影響することを報告しているが、本研究では、オリゴ核酸によりBreg細胞への分化を抑制し、ネオアンチゲン由来の抗原ペプチドに対する特異的な免疫回避機構を解除し得るか否かを以下のような実験系で解明する。
癌細胞由来のtumor cells-released autophagosomes (TRAP)に表出するHMGB1がB細胞のTLR2を活性化し(TLR2-MyD88-NF-kB signal pathway)、IL-10を産生するBreg 細胞へ分化し、ネオアンチゲンに反応するCD4+T細胞とCD8+T細胞を抑制するものと考えられる。抗腫瘍免疫応答におけるHMGB1 の生理的役割について詳細を明らかにするため、B細胞において HMGB1 を欠損させたHmgb1 conditional knockoutマウスに、OVA遺伝子移入したマウス大腸癌や肝癌腫瘍株の移入後の抗OVA-CD4+T細胞とCD8+T細胞応答を解析する。HMGB1 の機能を抑制する新規のデコイオリゴ核
酸がBreg細胞の誘導を抑制し、抗OVA-CD4+/CD8+T細胞応答が亢進して、移入した大腸癌や肝癌腫瘍の発育が抑制されるか否かを解析する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 異種糖鎖抗原NeuGcにおける腫瘍学的特性の解析2020

    • 著者名/発表者名
      秋本修志、田原裕之, 井出隆太, 築山尚史, Akhmet Seidakhmetov, 山根宏昭, 佐藤幸毅, 今岡祐輝, 本明慈彦, 中島一記, Jamilya Saparbay, 田口和浩, 田中飛鳥, Doskali Marlen, 谷峰直樹, 森本博司, 大平真裕, 井手健太郎, 小林剛,田中友加, 大段秀樹
    • 学会等名
      第22回異種移植研究会
  • [学会発表] 血液型不適合腎移植における免疫解析2019

    • 著者名/発表者名
      森本博司、井手健太郎,田原裕之,大平真裕,田中友加,大段秀樹
    • 学会等名
      第55回日本移植学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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