研究課題/領域番号 |
19H01062
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
猪原 秀典 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00273657)
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研究分担者 |
二村 圭祐 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00462713)
森井 英一 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10283772)
谷内田 真一 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20359920)
岡田 随象 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70727411)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中咽頭癌 / ヒトパピローマウイルス / 前癌病変 / HLA / マイクロバイオーム |
研究実績の概要 |
HPVレセプターの同定:HPV感染に関わる遺伝子を同定するための実験系をgenome-wide CRISPR-Cas9 screenの手法を用いて確立し、2つの遺伝子(SLC25A17とSAMHD1)を同定した。SLC25A17の発現を抑制するとHPV感染も抑制されたが、SAMHD1を抑制してもHPV感染は抑制されなかった。以上より、SLC25A17がHPV感染に関与することを明らかにした。SLC25A17がコードするのはPMP34というペルオキシソーム膜タンパクの一種で、様々なウイルス感染への関与が報告されている。 HPV関連中咽頭癌の前癌病変の同定とそのバイオマーカーの確立:扁桃摘出患者1,034例について術前に咽頭HPV感染を解析したところ高リスク型HPV感染を25例で認めた。更に、12例で持続感染を認め、5例で高リスク型HPV mRNAの発現を認めた。高リスク型HPV咽頭感染を認めた25例の摘出扁桃は、前癌病変を同定するために保管している。一方、circulating tumor HPV DNA (ctHPVDNA)がHPV関連中咽頭癌の同定において非常に感度および特異度が高く、ctHPVDNAのレベルはtumor burdenと密接に相関していることを明らかにした。また、放射施治療後の効果判定時のctHPVDNAの有無は、FDG-PET/CTに基づくmetabolic responseよりも有意に予後と相関していることを明らかにした。 HPV関連中咽頭癌の発生に関与する口腔内マイクロバイオームの解明:HPV関連中咽頭癌患者に特徴的なHLAを同定するため血液検体の採取を、大阪大学、大阪国際がんセンター、国立がんセンター中央病院、愛知県立がんセンターで計490例から行った。272例についてSNPタイピングを完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HPV感染に関与する遺伝子を同定することができたが、残念ながらHPVレセプターに相当するものではなかった。 ctHPVDNAがHPV関連中咽頭癌の極めて有用なバイオマーカーであることを確立した。また、HPV関連中咽頭前癌病変を検索するための扁桃摘出標本を整えた。 HPV関連中咽頭癌に特徴的なHLAを同定するために血液検体のSNPタイピングを完了したが、まだ中間解析の段階である。また、HPV関連中咽頭癌に特徴的な口腔内マイクロバイオームを同定するための研究のIRBへの申請を、大阪大学、大阪国際がんセンターで行い承認された。 臨床検体を用いる研究に関しては、総じて新型コロナ肺炎のため検体収集が遅滞し、進捗に遅れを生じる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
高リスク型HPV咽頭感染患者、特に持続感染を認め高リスク型HPV mRNAの発現を含嗽検体に認める患者について、摘出扁桃の薄切連続切片を作製し、前癌病変の探索を行う。更に、ctHPVDNAが前癌病変のバイオマーカーとなるか検討を行う。また、放射線療法で加療するHPV関連中咽頭癌患者について、ctHPVDNAをベースライン、治療中1週毎、治療効果判定時に測定し、持続モニタリングの有用性について検討する。 HPV関連中咽頭癌患者に特徴的なHLAを同定するために、更に症例数を増やして最終的な解析を目指す。また、可能な限り多くのHPV関連中咽頭癌患者から治療前に唾液を採取してDNAを抽出し、ライブラリーを作製した上で次世代シークエンサーを用いたマイクロバイオームのメタゲノム解析(全ゲノムショットガンシークエンス)を行う。
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