研究課題/領域番号 |
19H01068
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
青木 和広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40272603)
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研究分担者 |
林 智広 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30401574)
秋吉 一成 京都大学, 工学研究科, 教授 (90201285)
本間 雅 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60401072)
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | RANKL逆シグナル / RANKL結合ペプチド / 人工エクソソーム / 骨形成活性 / 原子間力顕微鏡 |
研究実績の概要 |
我々はBone morphogenetic protein(BMP-2)に代わる創薬基盤確立のために、receptor activator of NF-kB ligand (RANKL) という骨を作る細胞に発現する分子に着目してきた。RANKL分子に結合するペプチドは、骨形成促進能はあるが、まだ、BMP-2に匹敵するほどの骨形成能力を持ち合わせた薬剤にはなっていない。一方、骨を吸収する細胞である破骨細胞が分泌する小さな脂質分子(リポソーム)には、BMP-2に匹敵する高い骨形成能力を示すことは明らかとなっている。この骨形成促進能は“RANKL逆シグナル”という前述のペプチドと同様なメカニズムで骨を作る細胞に働きかけることが明らかになっているが、まだその詳細は不明な点が多い。 本研究では、このリポソームに似せた人工の脂質分子(人工エクソソーム)を開発するために、骨形成促進作用が発揮される細胞膜上のRANKL分子の発現条件を明らかにすることを目的とした。 まず、破骨細胞から分泌されるリポソームに似せた人工エクソソーム合成のために、膜タンパクの膜貫通部分を除かず、リポソームに自発的に組み入れた。2重脂質膜に組み入れた膜タンパク質が機能的に働くか否かを、RANKLで誘導した破骨細胞形成抑制率で判定したところ、破骨細胞形成は抑制されず、リポソームに組み入れられた全長の膜タンパク質は機能的には正常に働かないことが明らかとなった。 また、新規RANKL結合ペプチドのスクリーニングを新たに始めた。現在、既存のペプチドよりもRANKL親和性が高く破骨細胞形成を効率よく抑えるペプチドが得られている。一方、RANKL結合ペプチドを原子間力顕微鏡のプローブとして骨芽細胞上に発現するRANKL分子の可視化を試みたが、明らかなRANKL分子の可視化にはまだ至っていない。 忍耐し探索を続ける所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工エクソソームの候補は製作され、培養実験をしながら試行錯誤しながら徐々に開発がすすんではいるが、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた実験において、細胞膜上のRANKL分子をマッピングする計測技術開発に時間が掛かっているため。
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今後の研究の推進方策 |
我々のこれまでの研究成果から、RANKLという骨形成細胞上のタンパク質に結合する分子すべてが骨形成促進作用を有するのではなく、RANKL分子が集合するクラスター化現象が骨形成促進作用を発揮するか否かの鍵になりそうだということを突き止めている (Ikebuchi et al Nature 2018, Sone et al., Biochem Biophys Res Commun. 2019)。骨形成細胞である骨芽細胞膜上に存在するRANKLタンパクに結合するペプチドで刺激後6時間以内にRANKLの細胞膜への輸送が増えます。骨芽細胞膜上のRANKL分子に結合し、骨形成シグナルを入れる人工エクソソームの開発に必要なRANKLの細胞膜上の分布状態を可視化する技術開発を進め、刺激後6時間以内に骨形成促進作用を有するRANKL結合分子のスクリーニングを可能にする最初の一歩を早急に踏み出したい。 このため、これまでは実際の細胞を使ったRANKL分子の可視化からいきなり挑戦していたが、原子間力顕微鏡の基本に帰って単純な無細胞系におけるRANKL分子の可視化から始める計画である。 人工エクソソーム作製に関しては、上述のように徐々に進んできているため、継続してRANKLに結合する生理活性が獲得できるような膜タンパクのリポソームへの組み込みをプロテオリポソーム工学を駆使して研究推進させる。また、東京大学菅研究室との共同研究でRANKLに結合する新規ペプチドのスクリーニングも同時に進めていく。 RANKL結合分子が骨芽細胞分化を刺激するシグナル伝達経路に関しては、破骨細胞から分泌されるRANKを含有した細胞外小胞刺激による骨芽細胞内のシグナル伝達経路は明らかにされているため、新たにスクリーニングされてきているRANKL結合分子の下流シグナル解析は問題なく進められると考えている。
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