研究課題/領域番号 |
19H01075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今中 雄一 京都大学, 医学研究科, 教授 (10256919)
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研究分担者 |
福田 治久 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30572119)
廣瀬 昌博 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 特任教授 (30359806)
林田 賢史 産業医科大学, 大学病院, 医療情報部長 (80363050)
猪飼 宏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70522209)
村上 玄樹 産業医科大学, 大学病院, 講師 (50549756)
國澤 進 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00732877)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域の医療の質 / 地域の介護の質 / 健康寿命 / 平均自立期間 / 健康・医療・介護の地域システム / 医療介護資源 / 医療介護費用 / 拠点化と連携強化 |
研究実績の概要 |
本研究では、国全体を悉皆的にカバーする要介護認定情報・介護レセプト等情報データベースと匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベースを用い、また、国・広域・多施設の各種の関連データ、各種行政統計、各種調査データ等の大規模データベースを構築し、厳密なセキュリティのもとデータベースを拡充・強化し、地域レベル、そしてその基盤となる組織や個人レベルの健康と医療介護のパフォーマンスの解析研究を進めた。 全国大規模のミクロデータを用いて、健康・医療・介護の諸側面からそれらのパフォーマンスの評価や要因解析を継続し知見を積み上げた。健康・医療・介護のパフォーマンスとは、健康余命・自立期間、地域医療の重要疾病・事業等のリスク調整アウトカム、エビデンスに基づく推奨の遵守率、ケアへのアクセス、要介護状態のリスク調整悪化率等を指す。これらを計測する技術、さらに地域毎に計測する技術を研究開発し、健康と医療介護の社会システムの諸側面から諸要素の評価研究を行った。これら諸要素の研究成果は、地域レベルでの健康と医療介護のパフォーマンスの要因構造解明と予測モデル構築の基盤となるものである。 地域レベルの解析においては、急性心筋梗塞と脳梗塞における医療介護のパフォーマンス(アウトカムやプロセスの質、アクセス、費用・資源等)の各地域レベルでの計測値を初段階の成果として得て検証を行い、関連要因の予備解析も行った。全国諸地域と専門家へのフィードバックを行い、それらを通じ妥当性を検証するとともに洞察を深めた。また、地域別の医療パフォーマンスと各種モデルに基づき全国諸地域の健康余命を実測・検証したのは重要成果である。包括的諸要因のデータベースを整備し要因構造解析の準備を進めた。また、COVID-19禍のもと、その医療介護システムへのインパクトを経済面と臨床面の多側面から、迅速に解明したのも重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国全体の医療介護のレセプト等データ、国・広域・多施設の各種データ、各種行政統計・調査データ等の大規模データベースを拡充し厳密なセキュリティ管理のもとに解析を進めた。本研究の基盤として、保健医療介護の資源・過程・費用と健康成果に係る以下の成果を創出した。 (1)医療介護システムへのCOVID-19のインパクトについては、経済面からのインパクト、疾患領域ごとのインパクト(成人・小児の感染症、外科手術、循環器等救急疾患など)、自粛・参加控えによる要介護者の機能低下などを明らかにした。COVID-19診療の負担を定量化、外科手術では特に耳鼻科、眼科、年齢層では小児において、大きな負の影響を明らかにした。また、感染制御の体制、終末期医療のあり方、高額医療費分析などシステム視点で評価研究を行った。医療の質の評価の点では、診療指針遵守、大量処方、アウトカムリスク調整の手法開発を行い、地域医療パフォーマンスと人的資源との関係を見出した。健康視点では健診と医療の情報を連結し腎疾患悪化予防の健康教育上の知見を明らかにした。 (2)以上を基盤として地域格差の要因構造について以下を行った。要介護や認知症の生活自立度を踏まえて、全国各地域の健康余命をさまざまなレベルで計測し、より安定な健康余命指標の開発において実測・検証を行った。要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供を受けて全国データを用いて解析したものである。また、地域の包括的諸要因のデータベースを整備し要因構造の解析を進めた。匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベースの提供を受けて、地域別の医療パフォーマンスについては、急性心筋梗塞と脳梗塞における医療介護のパフォーマンス(質、アクセス、費用・資源等)の各地域レベルでの計測・検証を行い、各地域の特性に根差した解析を行う基盤を構築した。 以上の如く当研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの成果を礎に、引き続き、[1]「健康余命」と「医療・介護のパフォーマンス」について、日本全国各地域毎など諸側面で定量化しつつ、[2]それらの要因構造を解明し、[3]それらの予測・シミュレーションモデルの構築を進める。各種解析技術・解析デザイン、即ち共分散構造分析、マルチレベル分析、時系列分析、地理空間分析、準実験デザイン、機械学習・人工知能技術等を活用していき、臨床医学、組織運営、制度政策の専門性・現実性を取り入れ融合して解析を進める。データは、全国をカバーする要介護認定情報・介護レセプト等情報データベースと匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベースを用い、さらに、全国多病院DPCデータ、介護多施設電子カルテデータ、社会心理面含む調査票データなどを利用する。人レベルのミクロデータを用い、国・地域、施設・組織、個人の各レベルをターゲットとした知見を創出する。その一環として地域医療介護システムの視点からCOVID-19の健康医療介護への影響や施策の評価研究も引き続き進める。 「健康余命」は、要介護状態や認知症自立度などをもとに生活機能低下までの余命をより安定した妥当な指標を開発しつつ地域別等各側面で算出・検証を進め、その特性や関連要因を明らかにする。「医療・介護のパフォーマンス」は、社会的インパクトの大きな急性心筋梗塞、脳梗塞、認知症や要介護状態などに重点を置き解析・検証を進め、その特性や関連要因を明らかにする。一部でQOL等を測定し解析する。 健康余命と医療・介護パフォーマンスに係る多側面の因子、即ち、医療介護関連資源配備、経済・社会・心理・人口・環境因子等を、包括的に取扱い、変数間の関係性を明らかにしていく。そして、健康余命、医療・介護パフォーマンスの関連因子との関係性、予測や要因構造のモデル構築を進めていく。
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