研究課題/領域番号 |
19H01081
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
横山 和仁 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (00158370)
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研究分担者 |
平田 岳史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10251612)
小椋 康光 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (40292677)
藤代 瞳 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (10389182)
姫野 誠一郎 昭和大学, 薬学部, 客員教授 (20181117)
篠原 厚子 清泉女子大学, 付置研究所, 教授 (90157850)
大森 由紀 北里大学, 医学部, 助教 (30415971)
松川 岳久 順天堂大学, 医学部, 助教 (60453586)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メタロミクス / LA-ICP-MS / 環境医学 / スペシエーション |
研究実績の概要 |
環境医学領域におけるメタロミクス手法の開発と応用を進めた。疫学調査から得られたデータを多変量解析している。次世代レーザーアブレーション(LA)法の開発を継続している。 LA法における試料格納セルの改造により信号のレスポンス時間を改善し、イメージング分析の高速化を図った。イオン検出器の改造により過渡的信号(例えばナノ粒子から得られる1ms以下の短い信号)からの精密同位体分析法を開発した。不感時間の正確な補正(dead time補正)に関して新しい手法を開発した。精密同位体分析のための新しい信号積算法を開発し、過渡的信号や不安定な信号でも精密同位体分析が可能とした。 スペシエーションを活用してセレンの代謝を明らかにする検討を継続して行った。セレンを過剰量摂取した際は尿中にトリメチル化体が排泄される分子機構について、分子生物学的手法とスペシエーションを組み合わせることにより2種類の酵素が協同的に機能してセレンの3段階のメチル化を担っていることを明らかにした。また、天然に存在する多様なセレン化合物が、ミネラル源として生体に利用される際に、腸内細菌叢が宿主のセレン代謝に協同的に作用していることも明らかにした。 カドミウム(Cd)腎症のモデルとして、Cd-メタロチオネイン複合体を調製し、マウスに静脈内、腹腔内、皮下の3種類の経路で投与し、腎障害を調べるとともに、腎臓におけるCdの分布についてLA-ICP-MSで計測した。投与1日後におけるCdの腎臓内分布は、皮下投与では腎臓全般に分布していたが、腹腔内と静脈内投与では、腎臓の表層部と皮質と髄質の境界領域(近位尿細管のS3部位が多い領域)の2か所に偏在していた。ヒ素曝露によって、インスリン抵抗性が高まり、筋肉量の低下が起こること、筋肉量低下のレベルとインスリン抵抗性の上昇が相関していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、各研究施設が使用不可になる、あるいは人的交流が不可能になるなどしたが、各研究分担者の協力により、実質的な検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきた方法をもとに、メタロミクス手法への応用を進めてゆく。疫学調査から得られたデータの多変量解析によるメタロミクス解析をまとめる。 LAについては、ガスラインの改造によるイメージング分析の更なる高速化、10ミクロンレーザーを使って2ミクロン程度の解像度を出すための分析手法の開発をし、環境医学試料への応用をめざす。また、従来の四重極質量分析計(ICP-QMS)に代えて、飛行時間型質量分析計:ICP-TOF)を用いることで、短時間信号から多元素同時分析法を行う。 セレンと同族元素であるテルルについても同様の機構でメチル化が起こるかを、スペシエーションを駆使して解明する。特に基質認識に重要と思われる酵素の構造に変異を導入し、元素認識部位の機能解析を行う。併せて、試料量を0.5 μL程度まで減らして、同様の感度と分解能を得るためのマイクロLC-ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を構築し、生体試料に応用する。 Cd-メタロチオネイン複合体の投与によるCd腎症の発症とCdの腎臓内分布との関係をさらに詳細に検討する。シスプラチン等のPt含有医薬品を投与した際の腎臓におけるPtの分布を明らかにする。ヒ素が筋肉量の低下を介してインスリン抵抗性を高める機構についてさらに詳細に検討する。
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