研究課題
本研究の目的は、最近の世界的な医療研究開発・政策の焦点となりつつある小児希少性・難治性疾患や遺伝性疾患の患者など、これまでは「社会的弱者」とされ、保護の対象として臨床研究から外されてきた者、とりわけその中でも小児や「未生の存在」である胎児を中心に、これら社会的弱者を積極的に臨床研究の被験者として用いる時代に対応した、研究倫理の新たな倫理的・法的原理基盤および倫理審査の判断基準等について検討することにある。研究最終年度となる本年度は、この目的達成のために、特に胎児の問題を中心に検討を進めた。胎児を対象とする臨床研究では、被験者保護を目的とする従来の研究倫理の枠組みの多くが適用困難であることが明らかとなった。その理由は、一つには、胎児は未生の存在であり、未だ「日常」を有さないことから、社会的弱者とされる被験者を保護するためのminimal riskの考え方が適用できないためであった。また、民法上も、胎児は出生しない限りは何らの権利も主張し得ないことから、胎児が胎児の段階で自らの生命保護や身体保護を訴える権利は存在せず、したがって、出生した「人」としての被験者と同等の保護を現状では期待することはできないこと、さらに、胎児との間に利益相反関係を有し得る妊婦が胎児の利益代弁者となることは困難であることが明らかとなった。そして、こうした様々な胎児特有の問題が解決されていない現状においては、母体である妊婦による胎児の研究参加についての同意の真正性についても倫理的疑念が残ることから、現在の研究倫理審査枠組み・手続きでは、胎児を対象とする研究の倫理的適切性を正しく判断することは困難であり、従って、本研究である程度明らかとなった胎児特有の倫理的課題を包摂するような、胎児を対象とする臨床研究に特化した研究倫理の枠組みを新たに構築する必要があると考えられた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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桃山法学
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Orphanet Journal of Rare Diseases
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Regenerative Therapy
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科学フォーラム
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