研究課題/領域番号 |
19H01084
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新井 哲明 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90291145)
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研究分担者 |
田中 喜代次 筑波大学, 体育系, 名誉教授 (50163514)
西村 雅史 静岡大学, 情報学部, 教授 (60740363)
根本 清貴 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80550152)
根本 みゆき 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80754316)
笹井 浩行 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (60733681)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 行動特徴 / 認知症プレクリニカル期 / スクリーニング / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究は、バイオマーカーによる認知症プレクリニカル期進行度と相関する行動特徴を同定し、日常生活及び臨床現場の双方で利用可能な非侵襲で簡便なスクリーニング手法として新規に定式化することを目的としている。本研究では四つの課題を設定した。1.MCI、ADスクリーニング研究メタ解析による行動候補の絞り込み。2.バイオマーカーと臨床検査中・日常生活中の行動データの新規収集。3.バイオマーカーと相関する行動特徴の同定。4.行動とその特徴セットをスクリーニング手法として定式化。 上記の課題の中で、本年度は1及び2を実施し、下記の成果を得た。まず課題1については、メタ解析を含む網羅的な論文調査に基づき、簡便なプレクリニカル期スクリーニング実現のためのデータ収集を目的とした実験デザインについて確定した。特に、行動候補については行動種目、タスクの選定に加えて体系的なセンサの評価・選定を行う事で、科学的な知見に加えて、実用上の応用可能性が高くなるように決定することができた。また、日常生活の中での行動データ収集のためのアプリを独自に開発した。この双方を含むデータは世界的にも類がなく、非常に貴重な知見になると考える。 課題2については、決定した実験デザインに基づき、新規にデータ収集を行うために協力機関と連携のもと、バイオマーカーとして重要なアミロイドPET検査、APOE遺伝子検査体制を整えた。そして、高齢者13名について、病院施設での心理・行動検査・バイオマーカー検査に加えて日常生活での2週間の継続的なデータ収集を行い、定めた実験デザインのもとデータ収集を実施することができた。 上述の研究活動の中で得られた成果については、本年度は国際誌3編、国際学会発表2本 の成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、上述課題1および2について取り組み、新規の実験デザイン確定、それを実現するための検査体制の確立、高齢者を対象とした実際のデータ収集、について着実に進めることができており、「当初の計画以上に進展している」と言える。 特に、実験デザインを確定するにあたり、メタ解析を含む網羅的な最新論文調査を行い、日常生活の中で継続的な行動モニタリングを実施する事で簡便なプレクリニカル期スクリーニングを新規に構築できる可能性を見出した。この成果を元に、継続的な行動モニタリングを行うための、センサの選定及び独自の行動データアプリケーションを新規に開発し、それらを用いて実際の高齢者からデータ収集を成功させたことは、1年間の成果としては卓越した成果であり、極めて順調だという事ができる。 加えて、先行する形で、プレクリニカル期アルツハイマー型認知症の診断のために、世界最高水準で検査を実施するための準備を終えることができ、一部は既に実際の被験者からデータ収集を終えることができている。特にタウPETについては、国際的に注目度の高い最先端のPETプローブ([18F]PM-PBB3)について当院施設で撮像を行える体制をわずか1年で整えることができている。 上述のとおり、今年度は当初の計画について一部先行する形で実施できたこと、当初の予定よりも内容の深化・拡充を行う事ができそれによる成果が出ている事、この二点を踏まえて、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、以下の手順で行う。第一に、初年度に得られた実験データについて予備的な解析を実施、当該研究で新規に策定された実験デザインを改善の必要性について検討し、残りのデータ収集のための実験を行う。これにより、当該研究で掲げた課題1と2について完遂するとともに、成果を国際論文誌にてまとめる。 第二に、得られた実験データを解析し、当該研究の課題3である、バイオマーカーと相関する簡便なスクリーニングのための行動特徴について同定を行う。この項目については、協力機関との連携のもと標準的な統計解析だけではなく、AI及び機械学習手法を用いて多角的な方法でアプローチを行う。これらの成果についても順次、国際論文誌への投稿を進める。 第三に、四つ目の課題について、上述によって得られる成果を総合して、行動データを用いた簡便なスクリーニング手法としての定式化を行う。ここでは、その他の研究や臨床現場を含めて、なるべく幅広い現場で応用可能にするための再解析を通じて、方法をまとめ上げ、実データを用いた評価を行い、国際論文誌やプレスリリースなどで広く周知する事を予定している。 昨年度から現在に至るまでの当該研究は、複数の連携機関との有機的な連携のもと、当初の計画を着実に進めることができているだけではなく、予定した以上の成果が出始めている。今後の研究についても同様に、当初の目的である簡便なスクリーニング手法をより良い形で実現するために、進める過程で得られる新規の知見を元にした成果の拡充や学際的な連携をより一層強化していく予定である。 *COVID-19のために実験スケジュールに影響が出る可能性があり、状況に応じて検討していく。
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