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2020 年度 実績報告書

手指を用いた巧緻運動の神経基盤とその機能再建

研究課題

研究課題/領域番号 19H01092
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

関 和彦  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 モデル動物開発研究部, 部長 (00226630)

研究分担者 舩戸 徹郎  電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40512869)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード巧緻性 / 手指 / 霊長類 / 脊髄反射 / 随意運動
研究実績の概要

神経細胞によるシナジー表現について、本年度は赤核及び大脳皮質一次運動野におけるpremotorニューロンが表現する筋シナジーとその違いに関するこれまでの実験データの1次解析を行った。つまり、これまで収集してきた2頭のサルにおける神経活動データから筋電図のspike-triggered averagingによって運動ニューロンに投射のあるpremotor ニューロンを同定する。一方、同時に記録した筋電図活動を非負値行列分解法(NNMF)を用いて筋シナジーの空間及び時間要素に分解し、それぞれpremotorニューロンの投射パタンと発火活動とを比較した。その結果、赤核細胞に関するデータは十分な一方、皮質細胞についてはデータ数が少ないため、統計的な検定力に不安が残された。従って、本年度は、前年度から記録していた個体に対する実験を継続し、ほぼ十分な数の記録を獲得した。感覚帰還信号による脊髄反射系の駆動について、本年度は、主として延髄の感覚1次中継核からの神経細胞活動記録方法の確立を行った。CTとMRIを用いて、正確な電極の挿入部位を推定することにより、ほぼ失敗なく楔状束核などの標的から、細胞活動記録を行なうことが可能になった。そして、延髄細胞の刺激反応電位が一定でなく動作局面に依存して変化することから、延髄の神経中継も脊髄と同様、受動的なものでなく、他の入力源によって修飾されることが判明した。脳卒中サルモデル作成について、前年度訓練した個体に脳卒中を作成し、その回復過程の評価を主に行動解析の観点から行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

3プロジェクトとも年度当初の予定通り順調に進んでいる。感覚帰還信号による脊髄反射系の駆動に関して、当初予定していた末梢神経オプトジェネティックスについて霊長類における適用には若干の遅れが見られるが、その分、げっ歯類で技術開発を進めているので問題ないと判断できる。特筆すべきは、楔状束核の細胞活動、及び刺激誘発電位を覚醒サルから記録できるようになったことである。この技術確立はおそらく世界初であり、高く評価できる。

今後の研究の推進方策

神経細胞によるシナジー表現については、研究成果をまとめて論文化を行なうと同時に、脊髄からの新規記録方法の開発を行う。既存の実験方法では、安定的に脊髄介在ニューロンのシナジー表現を評価するための十分な数のニューロン数で記録することが困難である。そこで、サル頸髄からのマルチユニット活動記録方法を確立する。脊髄反射については、前年度発見した正帰還ループを構成すると考えられる介在ニューロンが、実際に標的筋の筋活動を生成していることを、畳み込み演算などの解析によって証明する。脳卒中プロジェクトについては、行動解析と損傷部位の関連性についての解析を進め、論文化の準備を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Approaches to revealing the neural basis of muscle synergies: a review and a critique2021

    • 著者名/発表者名
      Cheung Vincent C. K.、Seki Kazuhiko
    • 雑誌名

      Journal of Neurophysiology

      巻: 125 ページ: 1580~1597

    • DOI

      10.1152/jn.00625.2019

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Distinct sensorimotor feedback loops for dynamic and static control of primate precision grip2020

    • 著者名/発表者名
      Oya Tomomichi、Takei Tomohiko、Seki Kazuhiko
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 3(156) ページ: -

    • DOI

      10.1038/s42003-020-0861-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Characterization of Brain-Targeted Drug Delivery Enhanced by a Combination of Lipid-Based Microbubbles and Non-Focused Ultrasound2020

    • 著者名/発表者名
      Omata Daiki、Hagiwara Fumiko、Munakata Lisa、Shima Tadamitsu、Kageyama Saori、Suzuki Yuno、Azuma Takashi、Takagi Shu、Seki Kazuhiko、Maruyama Kazuo、Suzuki Ryo
    • 雑誌名

      Journal of Pharmaceutical Sciences

      巻: 109 ページ: 2827~2835

    • DOI

      10.1016/j.xphs.2020.06.008

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Forelimb force direction and magnitude independently controlled by spinal modules in the macaque2020

    • 著者名/発表者名
      Yaron Amit、Kowalski David、Yaguchi Hiroaki、Takei Tomohiko、Seki Kazuhiko
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 117 ページ: 27655~27666

    • DOI

      10.1073/pnas.1919253117

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 生物の感覚運動機能を左右する閉ループ神経回路とその非侵襲的制御.2020

    • 著者名/発表者名
      関和彦、高木周、東隆、丸山和雄、鈴木亮
    • 学会等名
      第43回日本神経科学大会
  • [学会発表] 自由行動下における皮質脳波から筋活動情報を解読する ―野生型及び脳梗塞モデルサルにおける検討例―2020

    • 著者名/発表者名
      関和彦
    • 学会等名
      第22回日本ヒト脳機能マッピング学会
  • [学会発表] Are primates just big frogs? Forelimb force direction and amplitude are independently controlled by spinal motor modules.2020

    • 著者名/発表者名
      Yaron A, Kowalski D, Yaguchi H, Takei T, Seki K
    • 学会等名
      Neuromatch meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 霊長類は単なる巨大化したカエルか?神経プリミティブ仮説の再検討2020

    • 著者名/発表者名
      関和彦
    • 学会等名
      Motor Control 研究会第1回オンライン講演会
  • [学会発表] 筋シナジー解析による身体改変に対する神経適応機能の解明2020

    • 著者名/発表者名
      内田 直輝, Roland Philipp, 大屋 知徹, 原 友紀, 舩戸 徹郎, 関 和彦,
    • 学会等名
      計測自動制御学会 システム・情報部門 学術講演会2020

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公開日: 2021-12-27  

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