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2019 年度 実績報告書

情報環境エンリッチメントによる新たな健康・医療戦略「情報医療」の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19H01093
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

本田 学  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 部長 (40321608)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード脳・神経 / 神経科学 / 情報科学 / 精神・神経疾患 / 健康増進
研究実績の概要

脳は化学物質によって作動する臓器の一つであり、シナプス伝達を主たる基盤とする情報処理過程も化学反応であることから、脳では「情報と物質の等価性」の原理が成り立つ。こうした認識のもと、応募者らは物質的側面から脳病態にアプローチする従来医療を補完する新しい健康・医療戦略として、情報処理の側面から脳の健康にアプローチする〈情報医療〉を整理・提唱し、その方法論の確立と有効性の検証を進めてきた。本研究は、応募者らによるこれまでの研究成果を一層発展させ、情報医療を体系化するとともに、情報環境エンリッチメントを健康増進ならびに精神・神経疾患や生活習慣病の予防と治療に応用するための方略を開発することを目的とする。
今年度は、まず臨床研究として、うつ病の中でも情動系神経系の活動低下が原因と考えられているアンヘドニア(ポジティブ感情の低下、意欲減退、報酬に対する感受性の低下、歓びの喪失など)に対して、“アンヘドニアに対するポジティブ価システムに焦点を当てた認知行動療法(Positive valence system-focused cognitive behavioral therapy:PoCot)”と“超高周波音響によるハイパーソニック・エフェクト(Hypersonic Effect)”を組み合わせた新しい治療法を開発し、プロトコル論文として発表するとともに、臨床治験を遂行した。現在、その結果を解析中である。また、乳幼児の泣き声に含まれる超高周波成分が授乳期にある母体の胸部の血流を改善し、乳汁分ぴつを促す可能性を示した。動物実験では、齧歯類の超音波発声が、現実の文脈の中でコミュニケーションに果たす役割を明らかにするために、野外で野生マウスの鳴き声を収録するシステムを構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、まず臨床研究として、うつ病の中でも情動系神経系の活動低下が原因と考えられているアンヘドニア(ポジティブ感情の低下、意欲減退、報酬に対する感受性の低下、歓びの喪失など)に対して、“アンヘドニアに対するポジティブ価システムに焦点を当てた認知行動療法(Positive valence system-focused cognitive behavioral therapy:PoCot)”と“超高周波音響によるハイパーソニック・エフェクト(Hypersonic Effect)”を組み合わせた新しい治療法を開発し、プロトコル論文として発表するとともに、臨床治験を遂行した。また並行して、認知症行動・心理症状に対する臨床研究、アルコール依存症に対する臨床研究を実施した。現在、それら3つの臨床研究の結果を解析中である。
また、乳幼児の泣き声に含まれる超高周波成分が授乳期にある母体の胸部の血流を改善し、乳汁分ぴつを促す可能性を示した。動物実験では、齧歯類の超音波発声が、現実の文脈の中でコミュニケーションに果たす役割を明らかにするために、野外で野生マウスの鳴き声を収録するシステムを構築した。

今後の研究の推進方策

①齧歯類をもちいた情報環境エンリッチメントの作用機序の解明
野生マウスの超音波発声と行動を安定的に記録できるシステムを構築し、活動の活発性や攻撃性などを評価する指標を抽出する。これらを用いて、音情報のパラメータの違い(音の複雑性、周波数帯域、定常性、自己相関構造など)が行動に及ぼす影響を評価する。
②健常者を対象とした情報環境エンリッチメントの作用機序の解明
脳深部活性化効果を導く超高周波成分の振動情報パラメータを同定する。生理学的評価には、応募者らがこれまでにfMRIと脳波の同時計測によって開発した脳幹・視床下部の神経活動を反映する脳波の深部脳活性化指標と、各種ストレスホルモン、免疫活性指標などを併せて用いる。
③精神・神経疾患を対象とした情報環境エンリッチメントの臨床効果の検証
これまでに実施してきた認知症行動・心理症状(BPSD)とうつ病、アルコール依存症を対象とした臨床研究を論文として発表する。また認知症行動・心理症状については、さらに規模を大きくした臨床研究に着手する。さらに、認知症患者の介護現場の情報環境エンリッチメントが、介護者の介護技術の向上にもたらす影響を評価する。実験デザインは、上記患者に対するものと同じであるが、研究対象者を認知症介護に大きな有効性を発揮する〈ユマニチュード〉介護技術を習得するために研修中の看護師または介護士とする。ユマニチュードは、見る、触る、話す、立つ、を中核とした看護技術の体系であるので、介護者の視線計測や声掛け量(時間と単語数)を記録することによって、その効果を評価する試みに着手する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 超高周波を豊富に含む自然環境音を用いた情報環境医療2020

    • 著者名/発表者名
      本田 学
    • 雑誌名

      騒音制御

      巻: 44 ページ: 58-62

  • [雑誌論文] Augmentation of Positive Valence System?Focused Cognitive Behavioral Therapy by Inaudible High-Frequency Sounds for Anhedonia2019

    • 著者名/発表者名
      Ito Masaya、Miyamae Mitsuhiro、Yokoyama Chika、Yamashita Yuichi、Ueno Osamu、Maruo Kazushi、Komazawa Asami、Niwa Madoka、Honda Manabu、Horikoshi Masaru
    • 雑誌名

      JAMA Network Open

      巻: 2 ページ: e1915819

    • DOI

      10.1001/jamanetworkopen.2019.15819

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inaudible components of the human infant cry influence haemodynamic responses in the breast region of mothers2019

    • 著者名/発表者名
      Doi Hirokazu、Sulpizio Simone、Esposito Gianluca、Katou Masahiro、Nishina Emi、Iriguchi Mayuko、Honda Manabu、Oohashi Tsutomu、Bornstein Marc H.、Shinohara Kazuyuki
    • 雑誌名

      The Journal of Physiological Sciences

      巻: 69 ページ: 1085~1096

    • DOI

      10.1007/s12576-019-00729-x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 音のビタミン~ハイパーソニック・エフェクト~2019

    • 著者名/発表者名
      本田 学
    • 雑誌名

      ACADEMIA

      巻: 173 ページ: 41-57

  • [学会発表] 超高密度メディア情報を用いた情報環境医療の開発2019

    • 著者名/発表者名
      本田 学
    • 学会等名
      日本機械学会2019年度年次大会
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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