研究課題/領域番号 |
19H01098
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉村 忍 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90201053)
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研究分担者 |
三目 直登 筑波大学, システム情報系, 助教 (10808083)
荻野 正雄 大同大学, 情報学部, 准教授 (00380593)
武居 周 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40598348)
浅井 光輝 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90411230)
金子 栄樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40908802)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数値解析 / 大規模並列解析 / 連成解析 |
研究実績の概要 |
2019年度に、有限要素法による並列構造解析ソルバーであるADVENTURE_Solid、有限要素法による並列電磁場解析ソルバーである ADVENTURE_ Magnetic、SPH 法による並列自由表面流れ解析ソルバーである MScPHy の開発および高度化を実施した。2020年度は、これらのソルバーを組み合わせた大規模並列連成解析の実現のために、分離型連成解法および領域分割型並列化アルゴリズムの一般化等を実施し、ソルバー連携のための基幹技術を確立した。 本課題の後半2年 (2021~2022年度) は、2020年度までに開発してきた個別技術の高度化を引き続き進めつつ、これらを基に、各工学分野において重要な実問題の連成解析実施が中心となる。2021年度はまず、吉村・金子を中心に、これまでに羽ばたき飛翔体向けに開発されてきた大規模並列流体構造連成解析システムに対し、圧電素子解析システム・制御システム・回路システムを連結し、アクティブ制御やエナジーハーベスタの定量評価が可能となるよう数理面・実装面の拡張を行った。分担者の浅井・三目は、個々に実施してきた開発項目を統合し、波浪に対する総合防災の観点から、津波・土砂・沿岸構造物の連成解析を実施した。個別要素法による粒状体の解析技術とSPH法による流体解析 (MScPHy) の連成解析システムの開発と、固体間の接触摩擦を考慮した流体構造連成解析システムの開発を実施した。荻野・武居を中心に、主に癌の温熱治療への応用を目的とし、ADVENTURE_ Magneticに熱伝導ソルバーを連結させた電磁界-熱伝導連成解析システムを開発した。リエントラント型空洞共振器アプリケータの高周波電磁界解析ベンチマークモデルTEAM29を用いて妥当性検証および並列化効率の改善を実施した後、NICT数値人体モデルを対象とした大規模解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に開発した分散メモリ型並列環境向けの各種ソルバーを利用し、2020年度ではそれらを組み合わせた連成解析実施のための手法およびプログラムの開発がなされた。2021年度は各ソルバーや手法の高度化を引き続き進めつつ、各工学分野において重要な実問題の連成解析を実施する段階に入ったが、これらは概ね当初の計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に引き続き、本研究課題で開発を行ってきたソルバー群およびライブラリ群を用いて、工学分野において重要な連成問題の解析に挑戦する。これらの解析を通じて、解析精度・並列化効率・計算安定性など多面的な視点に立った上で、複雑・複合問題に対する「数値解析システム構築戦略」を議論する。吉村・金子を中心に、圧電素子等を使用した柔軟構造物の動的制御やエネルギー回収を定量評価するために、有限要素法をベースとした流体・構造・電場・制御の連成解析システムを構築する。また、この解析システムを用いて羽ばたき飛翔体の飛行制御の解析や翼フラッタ振動からのエナジーハーベスティングを行う無人航空機の解析に挑む。浅井・三目を中心に、津波や高潮等の波・土砂および内部の浸透流・構造物の変形や破壊などを包括的に評価するための連成解析システムを構築する。ここでは、流体や土砂の計算に粒子法を用い、構造物の計算には Extrinsic Cohesiveモデルを導入し破壊解析を可能とした有限要素法を採用する。実験結果との比較を通じて、本課題で開発してきた基盤技術の異手法間連成解析に対する適用性を評価し、より汎用的な方法論の開拓を目指す。加えて、荻野・武居を中心に、NICT数値人体モデルを用いた電磁界熱伝導連成連成解析を通じて、領域重複型の大規模連成解析に適したデータ構造と並列アルゴリズム構築を目指す。2022年度は主に、「大規模並列連成解析の高速化に関して、有効に機能する前処理とはどのようなものか」という命題に対して、実問題解析を通じたアプローチを試みる。上記の解析を通じ て、並列解析ソルバーをコンポーネントとした「メタ視点の数値解析システム設計」への道が拓かれる。
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