研究課題/領域番号 |
19H01109
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
Attrapadung Nuttapong 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (40515300)
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研究分担者 |
花岡 悟一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (30415731)
松田 隆宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60709492)
Schuldt Jacob 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80750893)
照屋 唯紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (20636972)
山田 翔太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (70750834)
坂井 祐介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (40750659)
村上 隆夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80587981)
縫田 光司 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (20435762)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 暗号理論 / 情報セキュリティ |
研究実績の概要 |
本研究は、複数の任意の高機能暗号方式における暗号文変換および方式の組み合わせ変換が可能とする「アジャイルクリプト技術」の実現を目指す。今年度の代表的な成果は以下である。 - 関数暗号という、暗号化の際にアクセスコントロールを指定可能な暗号技術に関して、組み合わせ変換によるアクセスコントロール機能の拡張、安全性及び効率性の向上を取り組んでいる。特に、関数暗号における組み合わせ変換の一般的構成を提案し、暗号理論分野のトップ国際会議であるEurocrypt 2019に採録された。これにより、様々な関数暗号の組み合わせ機能が可能となった。 - 秘匿計算という、情報を秘匿したままデータ解析ができる技術に関して、秘密分散フォームの変換が可能とする方式を提案し、この変換により従来の方式より効率な秘匿計算プロトコルが得られた。この成果は国際会議ACISP 2019にて発表し、Best Paper Awardを受賞した。また、秘密分散の変換技術を応用し、プラバシ保護可能な機械学習プロトコルを提案し、成果は国際論文誌IEEE Accessで発表した。さらに、秘匿計算に有用とされる秘匿大小比較プロトコルについて様々なデータフォーマットに対応できる変換を提案し、国際論文誌IEICE Transactionsで発表した。 - 公開鍵暗号に関する成果は、低い安全性を持つ公開鍵暗号から、高い安全性の公開鍵暗号方式に変換可能な技術を提案し、成果は暗号理論分野のトップ国際会議TCC 2019に採録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アジャイルクリプト技術について成果を複数得られたため、おおむね順調に進展していると自己評価する。具体的に、進行状況は主に以下述べられる。なお、以下の「アジリティレベル」(1から3)と「ユニバーサリティレベル」(universal or specific)は得られたアジャイルクリプト技術における「汎用性レベル」を示している。(具体的な定義は提案書に書いてある。) - 関数暗号の組み合わせ変換フレームワーク(Eurocrypt 2019)の成果は、個別暗号方式間の組み合わせ変換のため想定していたアジリティレベル1の変換を達成できた。また、この成果はuniversal変換なのため、非常に高いユニバーサリティレベルを達成している。 - 秘匿計算計算の変換プロトコル(ACISP 2019)に関する成果は個別暗号方式間の変換のため、想定していたアジリティレベル1の変換を達成できた。 - 公開鍵暗号に関する成果は、低い安全性を持つ公開鍵暗号から、高い安全性の公開鍵暗号方式に変換可能な技術を提案しており、想定していたアジリティレベル1の変換を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今度は、昨年度得られた様々な個別暗号技術の成果をベースに、それらの融合技術や相互変換を提案する。具体的に、以下のサブ研究課題を行う。 [①: アジャイルクリプトの基盤理論の確立] 昨年度確立した効率的な秘匿計算計算プロトコルなどをベースに、段階的にアジリティレベル1から3のアジャイルクリプトにおける基盤理論を確立することを目指す。また、他のグループと連携し、設計された変換について、証明可能安全性の付与を行う。[②:関数暗号のアジャイルクリプト] 昨年度確率したアジリティレベル1の関数暗号フレームワーク(Eurocrypt 2019)に基づき、アジリティレベル2の変換の実現を目指す。特に、異なる機能を持つ方式への変換方式を設計する。[③:準同型暗号のアジャイルクリプト]昨年度に引き続き準同型暗号方式についてアジリティレベル1とレベル2の変換の実現を目指す。特に、本研究グループがAsiaCCS’18で発表した方式をベースに、準同型暗号におけるアジャイルクリプトの実現を目指す。[④:汎用的融合アジャイルクリプト] 関数暗号と準同型暗号の融合を目指し、両者間の変換に関するアジャイルクリプト(アジリティレベル2)の設計を行う。関数暗号の持つアクセス制御機能と、準同型暗号の持つ暗号化状態での計算が可能という機能の融合は、理論的にも実用的にも非常に挑戦的な課題であるため、本年度もあらゆるアプローチで研究を行う。特に、暗号技術方式の相互変換を設計するには対話型によるアプローチが有用であることが、昨年度から現在進行中の研究で一部確認できているため、このアプローチを中核的に検討し、理論を確立していく。[⑤:プライバシ情報の保護技術のアジャイルクリプト] これまで得られた差分プライバシに関する成果に基づき、段階的にアジリティレベル1から3のアジャイルクリプトにおける基盤理論を確立することを目指す。
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