研究課題/領域番号 |
19H01114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山西 健司 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90549180)
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研究分担者 |
朝岡 亮 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00362202)
大西 立顕 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (10376387)
谷戸 正樹 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (30284037)
渡辺 努 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90313444)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 潜在構造変化検知 / 変化検知 / 異常検知 / 埋め込み / 緑内障進行予測 |
研究実績の概要 |
予兆情報学に関して、数理・物理予兆情報学、医療予兆情報学、経済予兆情報学のそれぞれで基礎的手法を構築した。数理・物理予兆情報学では、多次元時系列の潜在構造変化を検知する手法として、1)MDL変化統計量に基づく予兆検知手法、2)変化の過渡期の次元を定量化する「記述次元」の計算法、3)変化の起こり方のパタンの変化を捉えるための「メタ変化検知法」を提案し、BigData2019、Entropyなどで発表した。また、変化予兆を捉えるには階層的な高次元データを低次元の連続値空間に埋め込むことが技術が有用となる。これを実現するための手法を構築し、ACML2019で発表した。
医療予兆情報学では、緑内障進行予測のために以下のデータを取得した。1)8回以上の視野記録と時系列の光干渉断層計の計測のある676例1146眼、2)単回の視野記録及び光干渉断層計計測のある478例751眼。これらを利用して1)視野のトレンド解析にdata augmentationを付与すること、2)トレンド解析の結果に二項検定法を当てはめ視野の進行の有無を診断することの有用性を示した(Br J Ophthalmol 2020, Am J Ophthalmol 2019に掲載)。
経済予兆情報学では、経済危機の予兆を不動産データから検知する手法を開発するために,全国約三万地点の公示地価の時系列データを解析した.地域性を反映して地価は動的に変動しており,その異常度を確率的k近傍時変グラフの構造変化から算出する手法を開発した.これにより,1990年代のバブル崩壊や2010年代の世界金融危機の余波による異常を確認できた(国際会議ComplexSystemで発表).また,不動産バブルの形成・崩壊の局面で,不動産間の価格裁定の強さの変化を計測し,資産価格裁定に関するマクロ経済学・ファイナンスの理論モデルの含意と比較する研究を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理予兆情報学では、今後の研究の基盤として、MDL変化統計量を用いた予兆検知手法と、潜在空間埋めこみによる潜在構造検知手法を確立した。今年度はこれらの手法の理論的実験的検証を行った。これにより今後の研究の中で強固な基盤となると思われる。
医療予兆情報学では、緑内障進行予測を含む今後の展開において必要となる、基本的データを収集し、基本的手法を検証した。今後の研究につながる基礎固めができたと考えられる。
経済予兆情報学では、不動産データから経済危機の予兆を検知するための基本的手法としてk近傍時変グラフといった手法を確立した。今後も不動産データを対象にする取り組みに注力するので、今後の研究につながら括弧たる基盤を構築できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、数理・物理予兆情報学、医療予兆情報学、経済予兆情報学に分けて研究を行って行き、その相互作用の下で成果を創出していく。数理予兆情報学では、予兆検知のための数学的手段をさらに生み出していく。特に、微分的MDL変化統計量といった新しい概念を創出するとともに記述次元の理論的性能をより明らかにすることを課題とする。また、潜在空間の埋め込みについて、埋め込み先の次元の最適化手法について研究していく。さらにネットワーク変化検知に潜在空間埋め込みを組み合わせることによる手法についても研究していく。
医療予兆情報学では、本年度取得したデータを基に、さらに眼底写真などのデータも取り込みながらより、ヘテロでダイナミックなデータを対象にした緑内障進行予測や、各種疾患の診断の基本手法を確立していく。
経済予兆情報学では、経済危機予兆検知のためのデータ取得として、不動産データに加え、銀行の取引データについても可能性を検討するとともに、不動産取引ネットワークの異常検知手法に改良を重ねブラッシュアップしていく。
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