研究課題
予兆情報学に関して、数理・物理予兆情報学、医療予兆情報学、経済予兆情報学のそれぞれで基礎的手法を発展構築した。数理・物理予兆情報学では、多次元時系列の潜在構造変化を検知する手法として、1)微分的MDL変化統計量に基づく予兆検知手法、2)潜在変数モデルの階層的変化検知手法を提案し、Scientific Reports, ICDM2020などで発表した。特に、1)ではCOVID-19感染爆発について、提案手法より感染爆発の約6日以上早く予兆を検知ができていた。また、変化予兆を捉えるには正規化最尤符号長を効率的に計算する必要が出てくる。そのためのFourier解析に基づく新しい手法を開発しIEEE Trans ITに掲載された。医療予兆情報学では、視野感度時系列データと光干渉断層計計測データ時系列の双方から緑内障の進行を予測するための「潜在空間回帰方式」を提案した。また、緑内障病態に関連する全身因子について眼科健診データベースを用いた解析を行った。聖隷健診センターより10年間で約20万回の検診データを取得し、眼底写真、頸動脈エコー、脳MRI、心電図のある症例の抽出を行った。脳ドックMRIの脳梗塞所見による視神経乳頭形状プラニメトリー予測,血液及び生体計計測データによる眼圧予測の可能性について論文化した。経済予兆情報学では、不動産市場におけるバブルの検知手法を開発し日本のデータに適用した。また、パンデミック下での人々の行動変容を、スマホの位置情報データを用いて計測する手法を開発し日本に適用した。法的拘束力を伴うロックダウンが行われなかった日本では、自発的な行動変容が起きたことを明らかにした。また、銀行送金ネットワークの時間変動から経済危機を予兆検知するために、疎性・スケールフリー性,潜在的なブロック構造,季節性を再現できるネットワークモデルを構築し、動学モデルへの拡張も行った。
2: おおむね順調に進展している
数理予兆情報学では、微分的MDL変化統計量を用いた予兆検知手法と、潜在空間埋めこみによる潜在構造検知手法を発展させた。これにより今後の研究の基盤が一層強化された。医療予兆情報学では、視野感度データと網膜層厚データといったヘテロなデータを統合する方法を新たに提案して、その有効性を検証した。この手法は、今後、本研究をマルチモーダル医療解析へと発展させるうえで強固な基盤になる。また、今後の研究に必要なデータの抽出を実施した。経済予兆情報学では、銀行取引のデータからの経済危機予兆検知や不動産取引からのバブル予兆検知の基礎的な手法と実験結果を確立した。着実に経済予兆情報学の基盤を構築していると言える。全般的に、コロナ禍のために、海外出張よる直接的な情報収集や議論をすることはできなかった。
今後も、数理・物理予兆情報学、医療予兆情報学、経済予兆情報学に分けて研究を行い、その相互作用の下で成果を創出していく。数理予兆情報学では、ネットワーク型知識の変化予兆検知の数学的基盤を発展させていく。また、潜在空間の埋め込みについては、双曲空間への埋め込みの性能をより詳細に解析するとともに、埋め込み先の次元の最適化手法について研究していく。医療予兆情報学では、網膜層厚からの視野感度推定と、網膜層厚時系列と視野感度時系列の統合モデルを構築して、双方の精度増強を図る。聖隷健診センターより取得した検診データから眼底写真、頸動脈エコー、脳MRI、心電図のある症例の抽出を行い、眼底写真から心・脳血管障害を診断、予測するアルゴリズムを作成する。緑内障データを500例新たに取得し、視野進行予測、視野感度推定を行うアルゴリズムの構築を行う。また、全身検査パラメータによる眼球内の変化予測精度の向上を目指して研究継続を行う。経済予兆情報学では、オンライン市場における商品価格の変動メカニズムを解明する。また、銀行送金ネットワークデータの基本的統計性を確認するために季節性の抽出,連結成分分解,Helmholtz-Hodge分解による階層構造とループ構造の分離などの複雑ネットワーク分析を行う.それらの結果を踏まえて銀行送金のグラフ生成を行う.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 3件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 7件、 招待講演 9件)
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