研究実績の概要 |
“湿度”や“皮膚表面の濡れ”は、ヒトの体温調節に大きな影響を与える因子であり、衣服素材の開発や室内環境設計などの応用面からも重要な研究対象である.湿度や皮膚表面の濡れは、“蒸れ感”、“濡れ感”として我々の意識にのぼり、温熱的不快感につながる.しかし、ヒトの濡れセンサーはないと考えられ、触覚、温冷刺激により形成されると予想されている.この検証には、機能的脳画像法(fMRI)を用いることが適していると考えられる。①濡れ感に関わる脳部位を同定し、②温冷感と圧覚の2つの異なる感覚から形成されると推察される濡れ感を、脳内情報伝達解析により明らかにする.さらに、③濡れ感により温熱的不快感が生じるメカニズムを明らかにすることを目指した.本年度は行動実験による濡れ感形成のメカニズム探索と、MRI装置内で再現可能な実験のパラダイムの作成で終了した。 実験1.接触物の含水量と濡れ感の関係の探索 健常成人29名を対象とした。温度による影響を除くため皮膚温度とほぼ同じに保った(30°C)のペルチエ素子(3 cm径)の上に7段階の含水量(0, 3.75, 7.50, 11.25, 15.00, 18.75, 22.50 microg/cm2)の綿素材をおき、人差し指で触知させた。5秒間の静止の後、濡れているか、濡れていないかを申告させた.同―含水量の触知をランダムに5回くりかえした。実験2.実験1で用いた綿に十分量の水を含ませ(microl/cm2)、20°C, 25°C, 30°C, 35°C, 40°Cの温度刺激をペルチエ素子を用いて加えた.被験者は濡れ感、温度の強さを0-10段階で申告した.同じ温度刺激をランダムに5回加えた。実験3.実験1,2のプロトコールを前腕もしくは前脛部被毛部でも行なった。また環境温度の影響を検証した。
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