研究課題/領域番号 |
19H01131
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高橋 晋 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20510960)
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研究分担者 |
藤山 文乃 北海道大学, 医学研究院, 教授 (20244022)
苅部 冬紀 北海道大学, 医学研究院, 助教 (60312279)
井出 薫 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (90806671)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 場所細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、動物が道に迷い静止した際に、海馬の場所細胞が移動中の約10倍速の早送りモードで再活性化される「リプレイ」現象に着目し、そのリプレイと、そこで表現されるエピソード記憶の因果関係を解明することを目指す。それは、独自の電気生理学的記録法に光遺伝学を活用した神経刺激法を組み込むことで、エピソード記憶を想起するメカニズムを、従来不可能であった神経細胞レベルで実証することでもある。同時に本研究では、認知神経科学、情報工学、電気生理学、光遺伝学を融合し、神経細胞活動が表現するエピソードの記憶を操作する独創的な技術を開発する。 本年度は、ラットが経験するエピソードとして、時間評価課題を構築した。そして、その課題を遂行しているラットの海馬から複数の場所細胞活動を長時間にわたり記録した。そして、海馬の錐体細胞層に配置した電極から記録する局所脳波から、150Hz周波数帯に現れる鋭波の立ち上がりを検出することにより、リプレイの発生を事前に予測し、リプレイ中に場所細胞によって表現されるエピソードの内容を解読する試みを継続して実施した。そして、場所細胞の活動パターンを調べることで、エピソード記憶の構造を理解する試みを実施した。 加えて、記録システムの刷新も実施した。無線で神経細胞活動を記録できるロガーシステムを確立した。超多点シリコン電極を活用することで複数の脳領域から同時記録する手法を確立した。動物の姿勢を含めた行動をリアルタイムに追跡するシステムを構築した。これらの計測系を活用することでエピソードに沿った神経活動動態の詳細な解析が可能になることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットが体験するエピソードとして、新たに時間評価課題を構築し、その課題遂行中の海馬ニューロン活動を記録することに成功した。そして、その間に経過時間を表現する時間受容野や、迷路上の位置を表現する場所受容野の関連性を調べることができた。また、無線で神経細胞活動を記録できるロガーシステムを確立した。超多点シリコン電極を活用することで複数の脳領域から同時記録する手法を確立し、動物の姿勢を含めた行動をリアルタイムに追跡するシステムを構築することができた。このように研究計画は目標に沿って概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度と同様にリプレイ中に場所細胞が表現する場所情報と時間情報の関連性を調べることで、エピソード記憶の解読性能を向上させる。そして、オプトジェネティクスを活用し操作したリプレイと、その操作によって誘導された動物行動との因果関係を動物行動学的に分析する。また、無線で神経細胞活動を記録できるロガーシステムを確立し、超多点シリコン電極を活用することで複数の脳領域から同時記録することが可能になったため、複数領野での神経活動の比較を試みる。動物の姿勢を含めた行動をリアルタイムに追跡するシステムを活用することで、エピソードの分解能を向上させ、オプトジェネティクスと組み合わせたリアルタイムフィードバックにより、エピソードと神経活動動態の因果関係を解明する。
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