研究課題/領域番号 |
19H01138
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 匡秀 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (30324859)
|
研究分担者 |
波多野 賢治 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (80314532)
宮崎 純 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (40293394)
安田 清 大阪工業大学, 情報科学部, 客員教授 (60523165)
桑原 教彰 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (60395168)
数井 裕光 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30346217)
佐伯 幸郎 神戸大学, システム情報学研究科, 特命講師 (40549408)
徳永 清輝 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 特別研究員 (90835092)
大武 美保子 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, チームリーダー (10361544)
児玉 直樹 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (50383146)
小杉 尚子 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (80589648)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | スマートセンサ情報システム / 「こころ」センシング / 在宅介護 / 認知症 / IoT / エージェント対話 |
研究実績の概要 |
2019年度の大きな成果は,「こころ」センシングを在宅で実施するための基盤技術を開発し,高齢者を対象とした評価実験を行ったことである.具体的には,個々の利用者の都合に合わせた「こころ」センシングを様々なモーダルで設定・実行できる「こころ」センシングサービス,このサービスを活用して継続的に利用者の心のうちを見守る「こころ」の見守りサービス,蓄積したログを用いた健康状態記録・可視化サービス,ログの検索・振り返りを通した記憶補助サービス等を開発した.これらのサービスを50~80代の高齢者に実際に利用してもらい,サービスの受容性や使用性,有用性等の観点から評価を行った. また,VAと高齢者の継続的な対話を実現するために,対話からその人個人にまつわる情報(個人オントロジー)を抽出する方法を提案した.その人の生活史や好きなもの等をLinked Data形式で蓄積し,インターネット上のLinked Open Dataにつなげることで,その人個人に寄り添った対話を生成する.蓄積した個人オントロジーから,その人が特にこだわりや興味を持っていること(個人関心事)を発見する方法も研究した. さらに,IoTやセンサを活用した宅内環境・行動センシングの技術開発にも注力した.宅内の画像から細粒度のコンテキスト(状況情報)を少ないリソースで認識するImage as a Document技術や,AIがとらえきれない微細な表情の変化を特徴量として記録・活用する表情センシングサービス,認知症スクリーニング等で用いられる描画検査の描画過程を可視化・分析するツールEVIDENT等を開発した. これらの宅内の状況収集から,具体的な自助や互助へと発展させる方法の検討も始めた.具体的には,在宅の高齢者・認知症当事者が日常生活の困りごとを共有し,対処法を推薦するサービスCompass4SLを提案した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度の研究計画では,在宅高齢者・認知症当事者の生活状況や「こころ」の状態をセンシングする要素技術の開発と,支援サービスのユースケース設計を掲げていた.これに対し研究成果においては,「こころ」センシングサービスや「こころ」の見守りサービス,宅内細粒度コンテキスト認識技術などを実装し,実際の高齢者に試用してもらうところまで進んでいる.実用化には未だ細かいチューニングが必要なものの,サービスに対して一定の受容性や有用性が示されていることは大きな進捗であると考えている.
研究代表者の中村はこれらの成果を,論文誌5編,国際会議論文13件,国内研究会17件,招待講演3件で発表した.「こころ」の見守りサービスについては,電子情報通信学会のヒューマンコミュニケーション賞(HC賞)も受賞している.また,本科研費の研究分担者を含む全体成果としては,論文誌8編,国際会議論文20件,国内研究会28件,招待講演4件が発表されている.
以上のことから,現在までの進捗状況は,「当初の計画以上に進展している」と考える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,2019年度に取り組んだ要素技術開発およびサービス設計を継続しつつ,実証実験に向けたシステム化とチューニングを進めていきたい. ■(A) 対認知症スマートホーム基盤 -- (A-1) 「こころ」センシング:より継続的で個人に寄り添った対話を生成する.(A-2) 統合管理データベース:種々のセンシング(環境,行動,「こころ」)で生成されるビッグデータと,高齢者同士の互助ネットワークの構造データとを統合管理するDBを開発する.(A-3) デジタルツイン生成:蓄積されるビッグデータから,高齢者のデジタルツインを生成し,支援サービスからの検索・問い合わせに対応する. ■(B) 自助・互助支援サービスの設計 -- (B-1) 自助支援サービス:対象者自身による「生活遂行支援」,認知症の早期発見につなげる「兆候発見」の実装方法を検討する.(B-2) 互助支援サービス:機会創出の必須機能である「マッチング」と「コミュニケーションの取り次ぎ」の実装方法を検討する.(B-3) 外部リソースの調査:インターネット上の信頼できる情報やサービスを調査し,ディレクトリにまとめる. ■(C) システム化とチューニング -- (C-1) 対認知症スマートホーム基盤の構築:(A)で開発した要素技術を統合してスマートホーム基盤を構築する.(A-1)は宅内のエッジシステムとして実装,(A-2)(A-3)はクラウド上に構築して複数の世帯間で機能を共有する.(C-2) 支援サービスの実装と検証:(B)で開発したシナリオをスマートホーム基盤上に実装する.認知症当事者宅に試験的に設置してもらい,データ収集と検証を通して,システム全体のチューニングを行う.
|