研究課題/領域番号 |
19H01140
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北野 勝則 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (90368001)
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研究分担者 |
立花 政夫 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (60132734)
小池 千恵子 立命館大学, 薬学部, 教授 (80342723)
川村 晃久 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (90393199)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 網膜 / 数理モデル / マルチ電極 / シナプス構造解析 |
研究実績の概要 |
網膜における情報伝達機構の解析を行った。網膜情報伝達経路の最初の段階である視細胞―双極細胞間の情報伝達において、双極細胞のサブタイプに対する情報伝達機構の違いに関して解析を行った。従来モデルであるLinear-Nonliner-Kinetics(LNK)モデルと、Kineticsパートをリボンシナプスダイナミクスに置き換えた提案モデルを錐体視細胞-cb1錐体双極細胞および-cb2錐体双極細胞間シナプス電流のデータに適用し、両モデルとも同等の再現精度が得られたものの、提案モデルの方が、シナプスの構造的特性と対応可能な特性を抽出できることを確認した。 網膜疾患の代表例である網膜色素変性症の病変機序についての解析を行った。網膜ON型双極細胞のTRPM1チャネルを欠損させたマウスにおけるシナプス回路構造解析を行い、神経細胞成熟過程における遺伝子欠損の影響を見出した。また、TRPM1チャネルの精密な局在解析を行った。さらに、網膜ON型双極細胞のTRPM1チャネルを欠損させたマウスから剥離網膜標本を作製して電気生理実験を行った。マルチ電極法を適用して、網膜神経節細胞群からスパイク発火を記録した結果、約6割の細胞が約8Hzのオシレーションを示した。また、網膜神経節細胞からホールセル記録を行った結果、オシレーションは主に抑制性シナプス入力によって発生しており、薬理学的実験からGABA受容体やグリシン受容体を介していることが示唆された。 高品質iPS細胞の樹立に向けた分子機構の解析を進め、低酸素誘導因子HIF 1の活性化による細胞内代謝の変化が重要であることを見出した。さらに、遺伝子改変マウスからiPS細胞を樹立し、再生網膜の機能解析を行う実験系の基盤を構築した。また、色覚に重要な錐体細胞が豊富なモデル動物であるジリスからiPS細胞を作製するための初期化誘導実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した研究について、特に予期しない問題も発生しておらず、遂行できているため。
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今後の研究の推進方策 |
網膜における情報伝達の解析については、提案モデルがより高精度にデータを再現可能かについて、モデルそのものやパラメータ探索法について改善を試みる。また可能であれば、他のサブタイプについての解析を進める。さらに、このデータ解析により得られた結果を踏まえ、リボンシナプスの構造を踏まえた、神経回路モデルの構築、まずは、視細胞-双極細胞-神経節細胞の垂直経路についての回路モデルの構築を目指す。 網膜色素変性症の病変機序については、以下の研究を進める。病態モデル網膜におけるシナプス形成の異常を、遺伝子工学的手法やおよびレポーターマウスを用いるなどして詳細に解析する。また、双極細胞は、アマクリン細胞や神経節細胞へ出力しており、抑制性伝達物質を放出するアマクリン細胞が神経節細胞におけるオシレーションを引き起こしている可能性があるので、TRPM1 KOマウスのアマクリン細胞からホールセル記録を行い解析する。 iPS細胞形成に重要な低酸素誘導因子HIF 1の下流標的遺伝子の網羅的解析を行い、高品質iPS細胞誘導法の開発を進める。また、マウスおよびジリスiPS細胞由来の網膜を作製し、その機能解析を進める。
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