研究課題
本年度は,最終年度として氷河・氷床における微生物拡大過程の総括と新たな課題への取り組みに関する野外観測および雪氷の生物化学分析,モデル開発を行った. アラスカのグルカナ氷河で6月と8月に調査を行い,6月の調査では2022年度に設置した自動気象観測機(AWS)の回収,氷河上積雪の赤雪の試料採取,定点カメラの設置を実施し,8月の調査では,裸氷域表面雪氷試料の採取,定点カメラの回収を行なった.定点カメラによる氷河表面撮影では計画通り成功し,氷河上の積雪に赤雪が広がる時間変化が詳細に明らかになった.今後,赤雪藻類モデルと合わせることで,積雪域の微生物繁殖過程を明らかにしていく予定である.昨年度までに氷河積雪域の赤雪および裸氷域の氷河藻の繁殖モデル開発したことに続き,本年度は氷河裸氷域に形成されるクリオコナイトホールという構造の発達衰退の物理モデルを作成した.グリーンランドでの観測に基づき,氷河表面熱収支とホール内外の氷の融解速度からホール深度のモデル計算を行った結果,氷河上の気象条件,特に風速,日射条件に対応して,ホールは発達または衰退し,ある条件でホールの崩壊を起こすことが明らかになった.ホールの崩壊は,内部の暗色の沈殿物(クリオコナイト)を表面に分散し微生物繁殖域を拡大する効果があることから,今回のモデルから微生物繁殖域の拡大要因となる気象条件を明らかにできる可能性がある.中央アジアの氷河消耗域のアイスコアの硝酸安定同位体比の分析からは,氷体内部で微生物による窒素循環の存在を示唆する証拠が得られた.氷河内で有機体窒素が生産されることで,その窒素が消耗域の微生物生産に影響を及ぼす可能性があることを初めて示すことができた.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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