研究課題/領域番号 |
19H01159
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北川 尚美 東北大学, 工学研究科, 教授 (00261503)
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研究分担者 |
廣森 浩祐 東北大学, 工学研究科, 助教 (80828062)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 潜熱蓄熱材 / 脂肪酸エステル / 融点推算法 |
研究実績の概要 |
本研究では、代表者ら独自の難水溶性エステルの効率的な合成法「イオン交換樹脂触媒法」を用いて、廃棄物系脂肪酸を原料として種々の脂肪酸エステルを合成し、脂肪酸基とアルコール基の構造が熱化学特性に及ぼす影響を評価する。そして、その影響を定量的に表現できるモデルを構築し、所望の融点を有する蓄熱材の設計法を確立する。1年目の2019年度は、以下の項目に取り組んだ。 項目①種々の植物油からの脂肪酸エステル合成と得られたエステル混合物の熱化学特性の評価 脂肪酸組成が大きく異なる4種の廃棄植物油を用い、メタノールとエタノールを反応物として脂肪酸エステル合成を行った。生成物は複数の脂肪酸エステルを含む混合物となる。この混合物の熱化学特性を示差走査熱量計で測定した。その結果、各エステル混合物では、含有量の多い脂肪酸由来のピーク(パルミチン酸PA、ステアリン酸SA、オレイン酸OA、リノール酸LA、リノレン酸XA)が複数観察された。しかし、成分数とピーク数は一致しておらず、PAとSAのエステル体は生活温度域付近(16-25℃)で1つのピークを形成している様子が観察された。そこで、PAとSAのエチルエステルとメチルエステルを取り上げ、さらに詳細に検討を行うこととした。 項目②試薬ベースの単成分系での脂肪酸エステルの熱化学特性の評価 前述の2種の脂肪酸のメチル体(PM、SM)とエチル体(PE、SE)の4種を取り上げ、それらの高純度試薬を購入し、単成分系と二成分混合系で熱化学特性を測定した。混合系では、融点の近い2種を組み合わせて4通りとし、モル分率を変化させた。その結果、いずれも単成分では融点が生活温度域よりも高いものの、PM+PE混合系では、どの組成比でも生活温度域に融点と凝固点を持つことが分かった。中でも、PMモル分率81%の時に、潜熱量が最も高く、石油由来のオレフィン類に匹敵することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究実施計画通りに、研究を進めることができている。また、順調に目的としているデータを蓄積、かつ、所望の熱化学特性を持つ脂肪酸エステルを見出すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
炭素鎖長の短いメタノールとエタノールを反応物とする脂肪酸エステルの熱化学特性を明らかにし、単成分では目的の生活温度域に融点を持つものがなく、二成分混合物とする必要があることが分かった。 今後、炭素鎖長3~8のアルコールを反応物として脂肪酸エステル(市販品なし)を合成し、それらの熱化学特性を評価し、データベースの充実を図る。そして、それらの結果に基づき、項目③単成分系でのデータに基づく混合物系の熱化学特性の推算式の構築に取り組む。ここでは、単成分系で得られた熱化学特性に基づき、二成分混合物系でのモル分率に応じた融点を予測する推算式の構築を目指す。
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