研究課題/領域番号 |
19H01160
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
李 玉友 東北大学, 工学研究科, 教授 (30201106)
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研究分担者 |
北條 俊昌 東北工業大学, 工学部, 准教授 (10708598)
安井 英斉 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (70515329)
増田 周平 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70552157)
矢口 淳一 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80342450)
久保田 健吾 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80455807)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 下水処理システム / 嫌気性膜分離法 / メタン発酵 / バイオガス / アナッモクス法 / 窒素除去 / MBR / 省エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究は下水処理における技術革新として嫌気性膜分離法と担体添加型一槽式アナモックス(Anammox)法の融合を工夫し実証することで、水質確保とエネルギー回収の両立を実現できる創エネルギー・低炭素型下水処理システムの確立を目指す。前段の嫌気性膜分離法では嫌気性メタン生成微生物群を分離膜によって高濃度に保持することで、下水中の有機物を効率よくメタンに分解してバイオガスとして回収できるとともに、余剰汚泥の大幅な削減、良好な水質も確保できる。また後段の機能性単体を用いた一槽式アナモックスにより窒素除去も可能な高度処理の機能を実現する。 平成2年度の前半期ではパイロット装置設計と設置を進め、下半期ではパイロットの稼働と25℃での連続運転を行い、HRTの影響を把握した。具体的に次のような成果が得られた。 嫌気性MBRのHRTを24hから6hと段階的に変化させて安定運転のデータを得た。HRT6h処理で処理水BODを目標20mg/L以下に対し10mg/L以下にすることができた。また、CODも50mg/L以下であった。ガス生成量は0.11 NL/L原水(最大値)であり、その組成は、メタン76~79% 、CO2 6~7%、N2 16~17%、H2S 3,100~3,300mg/Lであった。汚泥発生量は流入CODの25%、また流入水SSの36%が汚泥に変換される。 最初に人工下水を用いて一槽式アナモックス槽の窒素負荷(NLR)を0.05gNH4-N/L/dから0.5gNH4-N/L/dに上昇させることで、反応槽内のアナモックス反応速度(ANR)は0.01から最大0.45gN/L/dに上昇したことが確認できた。アナモックス槽のHRTを2.67hとし、嫌気性MBR処理水の全量を流入させた結果、アナモックス槽の平均窒素除去率80%以上、処理水TN<10mg/L、BOD<10mg/Lの目標値を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は下水処理における技術革新として嫌気性膜分離法と担体添加型一槽式アナモックス(Anammox)法の融合を工夫し実証することで、水質確保とエネルギー回収の両立を実現できる創エネルギー・低炭素型下水処理システムの確立を目指す。令和元年度では、小型実験装置を用いて嫌気性ユニットと一槽式アナモックスユニットの条件確立に焦点を絞って連続実験を通して、各ユニットの処理性能を把握した。令和2年度はパイロットプラントの設計、建設、運転を行い、25℃の条件で新規システムの処理性能を把握したことで、新規開発システムの有用性を把握した。当初計画以上に順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでおおむね計画通りの成果が得られたので、令和3年度以降は次のように取り組む予定である。令和2年度に建設して運転し始めたパイロット試験プラントを用いて季節変化に伴う温度の影響を検討する。具体的には温度を25, 20, 17, 15℃と段階的に下げて嫌気性MBRおよび一槽式アナモックスの運転に及ぼす温度の影響について次の項目を検討する。 (1)嫌気性MBRによる実下水処理に及ぼす温度の影響について、水質、バイオガス生成、汚泥生成率、膜ろ過フラックス、膜汚染速度などの指標で解析する。 (2)機能性担体添加型一槽式アナモックス槽に及ぼす温度の影響について脱窒率、生物膜の活性および浮遊汚泥の沈殿性などの指標で解析する。 (3)各ユニットの反応槽の機能性微生物の変化について解析する。 (4)システムの評価:物質収支、エネルギー収支の他に、従来のシステムに比較してCO2削減効果を評価し、新規システムの優位性を明らかにする。
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