研究課題/領域番号 |
19H01163
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
幡本 将史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20524185)
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研究分担者 |
川上 周司 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (00610461)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MBR / バイオフィルム / ファージ / 微生物 / 未培養微生物 / 活性汚泥 |
研究実績の概要 |
本年度も引き続き都市下水を対象とした嫌気無酸素型膜分離活性汚泥リアクター(A/O-MBR)を運転し,膜ファウリングを誘発する条件に変更して膜ファウリングを起こすことで,活性汚泥の微生物叢変化と膜に形成されるバイオフィルムの微生物群集を評価した。昨年度までにBetaproteobacteria綱や未培養系統分類群の細菌が初期バイオフィルム中に特徴的に優占していることが確認できたため,それら微生物の分離培養を原位置培養法や低濃度培地による培養などを利用して行った。その結果,膜面バイオフィルムで確認された Comamonadaceae 科や Chryseobacterium 属 Pseudarcobacter 属など種々の微生物の培養が可能であった。また原位置培養法を用いることで,平板培養を用いたコロニーからは確認されなかったWCHB1-32 属などの未培養細菌が確認された。このことから,MBRなどの水生環境で未培養細菌をターゲットとした培養においては現場培養が十分に効果的であることが示唆された。分離培養した菌株について,バイオフィルム形成能試験を実施した結果,使用する培地によりバイオフィルム形成量が異なる事が判明した。特に,活性汚泥の濃度に近い低濃度培地でよりバイオフィルム形成量が高まる微生物が存在することが判明した。このことから,各微生物のバイオフィルム形成能力の調査ではバイオフィルムが形成される現場条件に近い条件で試験をする必要があることを明らかにした。また,未培養微生物の分離に向け,分離株の存在しない細菌のアプタマーを取得するための新規SELEX法について検討を開始した。本分離株の一種Stenotrophomonas属細菌についてアンチセンス技術による増殖阻害に加えて,ファージによる増殖阻害の適用を目指し活性汚泥からファージの分離を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原位置培養法や低濃度培地による培養法を組み合わせる事で,MBR膜面に存在するバイオフィルム原因微生物と思われる細菌を多数分離する事に成功した。また,バイオフィルム形成能試験を実施した結果,使用する培地によりバイオフィルム形成量が異なる事が判明した。特に,活性汚泥の濃度に近い低濃度培地でよりバイオフィルム形成量が高まる微生物が存在することを明らかにした。そして,低濃度条件でバイオフィルム形成能が高い分離株としてGammaproteobacteriaのStenotrophomonas属細菌を同定し,本細菌を用いてバイオフィルム形成阻害実験に着手した。また,原位置培養法や低濃度培地による培養でも分離出来ないバイオフィルム原因微生物と思われる未培養微生物が存在しているため、これら微生物の分離のため,分離株の存在しない細菌のアプタマーを取得するための新規SELEX法についてターゲットの細菌の存在数などについて検討をはじめた
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続きバイオフィルムを構成する微生物群集の解析と分離培養を行う。特にパイオニア微生物としてバイオフィルムでコロニーを形成している微生物の特定を試みる。多様な系統分類に属するバイオフィルム形成細菌を分離し,通常培地と低濃度培地によるバイオフィルム形成試験を実施し,実際の環境でバイオフィルム形成に関与していると考えられる微生物の特定を進める。また,アンチセンス技術による増殖阻害に加えて,ファージによる増殖阻害の適用を目指し活性汚泥からファージの分離をおこない,バイオフィルム形成阻害によるファウリング制御の実現に向けて研究を進める。
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