研究課題/領域番号 |
19H01176
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 嘉伸 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70243219)
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研究分担者 |
大竹 義人 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80349563)
SOUFI MAZEN 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80823525)
菅野 伸彦 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70273620)
高尾 正樹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30528253)
三木 秀宣 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (10335391)
鍵山 善之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30506506)
高木 周 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30272371)
田中 正夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40163571)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋肉セグメンテーション / 筋萎縮 / 筋変性 / 関節可動域 / 骨密度 |
研究実績の概要 |
1.過去症例DBについて以下を進めた。 (1)臨床情報DBについて、インプラント機種別の整備を行った。(2)解剖情報DBについて、学習(正解)データ拡充に向けて、筋肉自動認識結果を修正することで大幅に正解データ作成時間の短縮が行えることを確認し、100例以上の正解データ追加の見通しを得た。 2. 患者解剖の自動認識ツールについて以下を進めた。(1)術前CT画像からの筋骨格認識を「骨盤から膝まで」を「下肢全体」へ拡張するための予備実験を行った。(2)術前CT画像から、骨密度測定用ファントムの自動認識・キャリブレーションにより骨密度分布推定の精密化を図った。(3)術前CT画像の不確実性推定の実用的利用の評価を行った。(4)術後CT画像からの人工関節の認識およびその検証を行った。(5) 2次元X線画像からの筋骨格3次元復元の一部として、各骨格・筋肉の分離法の検証を行った。 3. 疾患モデル構築について、100例以上の患者CT画像の自動認識を行い、各筋肉の萎縮・変性について評価した。筋肉の自動認識結果を評価し、疾患モデル構築のために自動認識結果をそのまま用いると、認識誤差のため、疾患状態が十分に反映されないことが想定されたため、自動認識結果をマニュアルで修正した後、構築することとした。 4. 手術モデル構築について、関節可動域計測ツールの開発を完了した。術後CT画像から自動認識した骨格モデル上に立案した人工関節設置計画に対して、複数の関節運動を想定して可動域を推定した。どの運動においても、マニュアルで作成した骨格モデルとほぼ同等に、可動域推定が行えることを確認した。 5. 意思決定支援について、術前の筋肉評価(疾患状態評価)から、術後の運動機能が予測できる可能性(手術時期の決定支援等、手術の意思決定に利用できる可能性)を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術前CT画像からの骨格・筋肉の自動認識結果を、次の段階の疾患モデル・手術モデルの構築に、どこまで、そのまま使えるか? そのまま使えない場合は、マニュアルの修正がどの程度必要か? について、明確な見通しが得られた点で、一つの意味のある進展が得られたと考える。骨格については、関節可動域計測が、自動認識結果からも、マニュアルトレース作成の場合と同等に推定できたことで、CT画像のみから自動手術計画を立案、および、そのための学習データ自動生成が行える見通しが得られた。筋肉については、自動認識では十分でないが、一定のマニュアル作業量で、これまで利用されていなかった個々の筋肉の萎縮・変性情報をモデル化できる見通しを得た。これらの結果は、まだ、論文として発表できていないが、学会発表では、疾患モデル構築のための筋肉評価の発表で「最優秀演題賞」(岩佐ほか、第47回日本股関節学会学術集会)を受賞しており、当初の計画どおりに進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 症例DB:(1) AIの学習・検証の強化のため、CT画像の患者解剖認識の正解データを増強する。昨年度までに開発したAIによる患者解剖自動認識結果を修正することで、効率的に正解データを作成する。(2)本研究のAIシステムが提供する精度予測情報を用いて、AIの認識結果向上に必要な正解データを効率的に作成する方法を検討する。(3)同一患者の術前・術後の筋骨格および術後の人工関節を認識した縦断DBを構築する。(4)コロナ禍で見合わせていた国立大阪医療センターの新規DB構築について、状況を鑑みながら慎重に進める。 2. 患者解剖の自動認識:(1)CT装置の機種、撮影条件、再構成条件の違いに対応した解剖認識AIを構築する。(2)同一患者の術前・術後の筋骨格/人工関節を認識した縦断DBを構築するため、人工関節認識(位置・姿勢推定)、術前・術後の骨格位置合わせ等、縦断変化のデータ化に必要な認識・解析システムを構築する。(3) 2次元X線画像からの筋骨格3次元情報復元について、各解剖構造の分離・骨密度分布の推定に加えて、骨格の形状復元・個別筋肉の筋肉量推定を行うシステムを開発する。 3. 疾患モデル構築:疾患モデルについて、左右で疾患進行度の異なる股関節の筋骨格左右差統計モデル、疾患進行モデルの開発を進める。歩行運動の解析・その生体力学的解析の検討も進める。 4. 手術モデル構築:同一患者の術前・術後の縦断DBを学習データとして、術前CT画像から術後の筋骨格解剖・人工関節設置状態・術後QOLスコアを予測・最適化するAIシステムの開発に着手する。 5. 意思決定支援:以上DB・モデル・システムを用いて、患者のライフステージ・ライフスタイルの要素を考慮した意思決定支援システムの検討を進める。
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