• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

力学刺激の知能化によるin vitro3次元組織の超効率的成熟化

研究課題

研究課題/領域番号 19H01178
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

尾上 弘晃  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30548681)

研究分担者 倉科 佑太  東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40801535)
舟橋 啓  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
山田 貴大  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20837736)
三浦 重徳  東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (70511244)
藤田 淳  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (10306706)
遠山 周吾  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (90528192)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードin vitro組織成熟化 / 力学刺激 / iPS由来心筋組織 / 機械学習 / 単一細胞イメージング
研究実績の概要

本研究の目的は,力学刺激によるin vitro 3次元心筋組織の成熟化のプロセスにおいて,計算機制御された力学刺激培養装置と単一細胞ライブイメージング,深層学習およびベイズ的最適化を駆使することより,迅速かつ効率的・効果的なin vitro組織の高度成熟化の実現,およびその方法論を創出すること,である.本研究により,従来,実験者による網羅的な条件検討が実験の主流であった生物学,組織工学の実験分野において,イメージング技術(センシング)・情報処理(インテリジェンス)・機械制御(アクチュエーション)を導入することにより,網羅的な条件探索することなく効率的に組織成熟化のプロセスを最適化し,高度な再生医療目標の実現への技術的貢献を目指す.本年度はファイバ状心筋組織への力学刺激の確立と単一細胞ライブイメージング可能な力学刺激装置の構築を中心に研究課題を遂行した.マイクロ流体デバイス技術と高純度ヒトiPS由来心筋細胞を用い,コアシェル型アルギン酸ゲルマイクロチューブ内に,直径100 um,長さ数m程度のファイバ形状の3次元心筋組織の形成と安定した培養条件を策定した.その際,心筋細胞に対し培養液から液性因子などの刺激などを与えることで組織が安定するとの知見を得ることができた.同時に,3次元組織に対して引張刺激を印加可能な力学刺激装置を開発し,2019年度予算により備品として購入した共焦点顕微鏡上でライブイメージング可能な実験セットアップの構築を完了した.引張可能な培養チャンバ内に繊維芽細胞を3次元的に培養して組織を形成し,その組織内の一部の細胞を遺伝子導入により細胞核と細胞膜を蛍光タンパクプローブで標識することで,引張刺激による細胞の形態変化を単一細胞レベルで観測することに成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①-1 ファイバ状心筋組織への力学刺激の確立:マイクロ流体デバイス技術と高純度ヒトiPS由来心筋細胞を用い,コアシェル型アルギン酸ゲルマイクロチューブ内に,直径100 um,長さ数m程度のファイバ形状の3次元心筋組織の形成と安定した培養条件を策定した.その際,心筋細胞に対し培養液から液性因子などの刺激などを与えることで組織が安定するとの知見を得ることができた.またファイバ状組織を培養チャンバに固定する技術を確立し,ライブイメージング可能であることを確認した. これは年度当初の計画どおりであり,純情に進展していると言える.
①-2 単一細胞ライブイメージング可能な力学刺激装置の構築:組織に対して引張刺激を印加可能な力学刺激装置を開発し,2019年度予算により備品として購入した共焦点顕微鏡上でライブイメージング可能な実験セットアップの構築を完了した.引張可能な培養チャンバ内に繊維芽細胞を3次元的に培養して組織を形成し,その組織内の一部の細胞を遺伝子導入により細胞核と細胞膜を蛍光タンパクプローブで標識することで,引張刺激による細胞の形態変化を単一細胞レベルで観測することに成功した.これは年度当初の計画どおりであり,純情に進展していると言える.
②-1 細胞のイメージング画像からの指標の取得:当該年度は,次年度以降に大量のイメージングデータが取得されることを踏まえ,機械学習を用いることで顕微鏡画像から3次元培養組織の状態を推定する学習器の実装を行った.具体的には,正常な状態の細胞画像のみを学習器に与えることで.異常な状態にある細胞を自動的に検知する学習器の試験的実装を行った.これは年度当初の計画どおりであり,純情に進展していると言える.

今後の研究の推進方策

次年度は以下の項目に取り組む.
(1)単一細胞ライブイメージング可能な力学刺激装置の構築
昨年度に開発した力学刺激培養装置にライブイメージングを適用する.束ねたファイバ状心筋組織の両端を把持して力学刺激を印加し,それと同時に共焦点顕微鏡を用いて単一細胞レベルでライブイメージングを可能とする装置の開発を行う.ファイバ状3次元組織への力学刺激は,(i)機械的な伸長もしくは(ii)電気的刺激による収縮の2通りの力学刺激を用い,全て計算機によりPythonで記述したプログラムでの制御を行う.また心筋組織のライブ観察のために,共焦点顕微鏡の焦点距離内で培養可能な薄型チャンバを力学刺激装置と統合する.
(2) ベイズ的最適化による3次元組織培養のオンライン制御系の構築
心筋の成熟過程とその制御をブラックボックスと捉え,ブラックボックス最適化の手法の中で高い性能を誇るベイズ的最適化を用いることで高効率な実験条件の探索を行う.培養プラットフォームの構築の際,iPS由来心筋と併用して,骨格筋細胞やマウス心筋細胞のセルラインなどを用い,実験の試行回数を上げることで計画をスムーズにすすめる予定である.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Microfiber-shaped building-block tissues with endothelial networks for constructing macroscopic tissue assembly2019

    • 著者名/発表者名
      Yuta Kurashina, Ryo Sato, Hiroaki Onoe
    • 雑誌名

      APL Bioengineering

      巻: 3 ページ: 046101

    • DOI

      https://doi.org/10.1063/1.5109966

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ECMゲルのマイクロ加工により形成されたin vitro 3次元組織内の細胞挙動観察2019

    • 著者名/発表者名
      尾上弘晃
    • 学会等名
      第93回日本生化学学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Shape deformation analysis of single cell in 3D tissue under mechanical stimuli2019

    • 著者名/発表者名
      Keitaro Kasahara, Yuta Kurashina, Shigenori Miura, Shogo Miyata, Hiroaki Onoe
    • 学会等名
      The 20th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems (Transducers 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] 引張刺激環境下におけるin vitro3次元組織内細胞形態観察システム2019

    • 著者名/発表者名
      笠原啓太郎,倉科佑太,三浦重徳,宮田昌悟,尾上弘晃
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第39回研究会
  • [学会発表] マイクロファイバ状心筋組織のための電気刺激デバイス2019

    • 著者名/発表者名
      深田佳祐,倉科佑太,遠山周吾,石倉恵子,藤田淳,福田恵一,尾上弘晃
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第39回研究会
  • [学会発表] 機械学習による画像分類2019

    • 著者名/発表者名
      舟橋 啓, 徳岡 雄大
    • 学会等名
      AIによる生物画像解析トレーニングコース
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞内代謝機構に基づくヒトiPS由来心筋細胞の大量作製とその応用2019

    • 著者名/発表者名
      遠山周吾
    • 学会等名
      第30回日本医学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞内代謝機構に基づくヒトiPS細胞由来心筋作製と心臓再生医療への応用2019

    • 著者名/発表者名
      遠山周吾
    • 学会等名
      第53回河口湖心臓討論会
    • 招待講演
  • [学会発表] ヒトiPS細胞由来の超高純度心筋組織球を用いた再生医療の現状と今後の展望2019

    • 著者名/発表者名
      遠山周吾、藤田淳、福田恵一
    • 学会等名
      第67回日本心臓病学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Large-scale production of purified human iPSC-derived cardiomyocytes for cardiac regenerative therapy2019

    • 著者名/発表者名
      相馬雄輔, 遠山周吾, 藤田淳, 中嶋一晶, 岸野喜一, 岡田麻里奈, 田野崎翔, 染谷将太, 森田唯加, 谷英典, 金澤英明, 福田恵一
    • 学会等名
      The 3rd JCS Council Forum on Basic CardioVascular Research
  • [学会発表] 心筋再生医療を実現するiPS細胞由来心筋細胞の大量培養2019

    • 著者名/発表者名
      藤田淳,竹村研治郎
    • 学会等名
      慶應義塾大学理工学部 創立80周年記念イベント 医工連携シンポジウム
    • 招待講演
  • [備考] 慶應義塾大学 理工学部 機械工学科 尾上研究室

    • URL

      http://www.onoe.mech.keio.ac.jp/index-j.html

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi