研究課題/領域番号 |
19H01181
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
島田 裕之 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, センター長 (00370974)
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研究分担者 |
米田 哲也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (20305022)
土井 剛彦 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 室長 (60589026)
ベ 成琉 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 研究員 (80707894)
李 相侖 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 室長 (90466194)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 頭部MRI / 脳内アミロイドβ / MRIバンク / preclinical AD / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究は多様な磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging: MRI)を用いて、脳内アミロイドβ(Aβ)の推定式を算出し、認知症発症に対してどの程度の予測能を有するか検証する。また、脳画像データを用いたディープラーニングも実施し、認知症発症予測モデルの精度向上を図り、正確度90%以上のモデルの構築を目指す。さらに、3年間で高齢者1200名のMRIデータを取得し、日本人高齢者のMRIデータバンクを構築することを目的とする。 2019年度は高齢者384名のT1及びT2強調3D画像が取得できた。そのうち183名からは拡散テンソル画像(DTI)、安静時機能的MRI(rs-fMRI)、位相差強調画像化法(PADRE)によるMRIデータが取得できた。 また、2019年度は地域在住高齢者約103名を対象にMRIデータによる脳内Aβ推定式を求めることを目的として分析を行った。アミロイドPETは50~70分の後期像を用いてMRIテンプレート上の関心領域を作成し、SPMのDARTELを用いて解剖学的標準化を行い、平滑化した画像で計測値を得た。T1強調3D画像を用いた構造的解析には、脳画像解析プログラムFreeSurferを用いてsurface based analysis法による全脳にわたる各領域の脳容積及び皮質情報を定量化した。従属変数はアミロイドPETによるAβ蓄積の有無や小脳との比で求めたstandardized uptake value ratio(SUVR)値とし、MRIから定量化した脳容積及び皮質情報を独立変数としたロジスティック回帰モデル及び一般線形回帰モデルの両面から検討した。その結果、アミロイドPET陰性より陽性のほうで海馬容積の減少がみられた。また、後帯状皮質のSUVRと帯状回容積間で関連がみられ、帯状回のSUVRが高いほど帯状回容積の減少が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MRIデータによる脳内Aβ推定式を求めることを目的とした分析については当初の計画通り進展しているが、MRIバンクに蓄積する各種のMRIデータの撮像についてやや遅れが生じている。理由としては病院での臨床検査として使用する新しいMRI装置の設置完了に意図しない遅れが生じてしまい、研究所のMRI装置の使用枠を病院の臨床検査として使用することが2020年1月に急遽決まった。そのため、2020年1月から実施予定であったMRI撮像を2021年4月に延期することになった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も引き続き地域在住高齢者約400名を対象にT1強調3D画像、T2強調3D画像、DTI、rs-fMRI、PADREを撮像し、MRIバンクを構築する予定である。2020年度は特にPADREと脳内アミロイドβとの関連性を検証するためにPADRE解析の自動化を進める。PADREは、組織の磁化率を鋭敏に画像信号として反映する位相画像情報から、目的の組織に関する位相を選択して強調する画像再構成法であり、本研究の分担研究者の所属機関である熊本大学の特許技術を用いて、Aβ蓄積に付随して蓄積されるヘム鉄に対応する位相を取り出すことでPADREによるAβ検出を実現する。また、本研究のアウトカムである認知症発症を診療情報明細書データより追跡調査を行い、認知症発症予測を脳画像から推定するためのディープラーニングの環境を構築する。
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