研究課題/領域番号 |
19H01182
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
津崎 良典 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10624661)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新ストア主義 / キリスト教的ストア主義 / セネカ / マルクス=アウレリウス / リプシウス / constantia |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、17世紀初頭から中葉までのヨーロッパにおける《新ストア主義》の展開は、リプシウス、デュ・ヴェール、そしてシャロンに代表される《キリスト教的ストア主義》に対する多種多様な陣営からの応答の軌跡として理解できるのではないか、という仮説の検証である。そのためには、まず《キリスト教的ストア主義》それ自体の具体像を精緻に描出する必要がある。そこで初年度は、リプシウスの一次資料において、古代ストア主義のなかでもとりわけセネカのいかなる言説が受容され、かつ、キリスト教的な観点からどのように修正されたのか、という問いの解明に傾注した。とりわけリプシウスの『精神の不屈について』(1584年)のラテン語原文とフランス語訳(Jacqueline LagreeがClassiques Garnier社から刊行したエディションを使用)の分析を開始し、セネカを源泉とするトポスを洗い出すと同時に、従来の見解ではその影響があまり注目されてこなかったマルクス=アウレリウス『自省録』を源泉とするトポスの存在を認定し、その解釈を開始した。いずれのトポスも、人間は自己といかなる種類の内在的関係をいかなる手段で取り結ぶのか、という《道徳論的人間学》に関する問い(古代ストア主義の諸言説のうち、アパテイア論、不屈の精神、徳論、精神の諸能力の指導、人生の儚さと死への怖れ、「退却」という精神の修練、等々)に関わるものである。あわせて関連する二次文献の検討も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リプシウスの『精神の不屈について』(1584年)の分析に着手できたから。ただし、新型コロナウイルスによるフランス国境封鎖のために、2020年3月に予定していた海外出張がキャンセルになったために、資料収集や外国人研究者との意見交換等において若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
リプシウスの『精神の不屈について』(1584年)の分析を継続すると同時に、『ストア哲学への手引き』(1604年)と『ストア派の自然学』(同年)の関連箇所の分析を開始(Jacqueline Lagreeの諸研究に依拠しつつ)する。できれば、《キリスト教的ストア主義》を代表するもう一人の重要人物であるデュ・ヴェールの『社会の災禍に際しての精神の不屈と慰めについて』(1590年)と『ストア派の道徳哲学』(1598年)の分析も、次年度後半で着手できればと考えている(Alexandre TarreteがChampion社より刊行した校訂版に依拠しつつ)。
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