研究課題/領域番号 |
19H01183
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
國分 功一郎 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (70515444)
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研究分担者 |
熊谷 晋一郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (00574659)
千葉 雅也 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (70646372)
松本 卓也 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90782566)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉症 / 発達障害 / ドゥルーズ / 哲学 |
研究実績の概要 |
ジル・ドゥルーズの哲学が自閉症研究にもたらす知見を中心に据えながら、哲学、医学、精神分析という三つの領域を横断しつつ自閉症を学際的に研究することが本研究課題の目標である。一年目である2019年は全部で7回の研究会・シンポジウムを行った。 第一回の研究会は 4/21(日)に東京工業大学國分研究室にて開催された。國分がドゥルーズ哲学における他者の概念について発表し、想像力の発生について議論を深めた。第二回の研究会は 6/2(日)京都大学松本研究室にて開催された。しばしば自閉症に対して無関心だと非難されてきたラカン派による自閉症への取り組みが松本によって紹介された。第三回は6/18(火)に、東京で開催された国際学術会議「7th Deleuze / Guattari Studies in Asia Conference 2019 Tokyo」での海外の研究者との交流および研究会メンバーの成果発表という形で開催された。第四回は大阪の会議室を借り、ゲストに大阪大学教授で、『自閉症の現象学』(勁草書房、2008年)の著者である村上靖彦さんをお招きし、研究会およびシンポジウムの形で開催した。研究会では熊谷晋一郎が脳科学を参照した自閉症研究を紹介。シンポジウムでは村上さんの発表を中心に討論が行われた。第五回は9/28(土)に東京工業大学の國分研究室で行われた。千葉が精神分析的知見をもとに、自閉症の言語をどう捉えるかについて発表を行った。第六回は10/27(日)に京都大学松本研究室にて開催された。滋賀大学保健管理センター教授で、『ニューロラカン──脳とフロイト的無意識のリアル』(誠信書房、2017年)の著者久保田泰考さんをゲストにお招きし、自閉症と精神分析の関係をお話していただいた。第七回は 11/22(土)に東京大学駒場キャンパスで小規模のシンポジウムを行い、これまでの研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究会やシンポジウムでは、メンバーの予想を遙かに超える成果が得られている。また少人数で集中的に研究会を行っていることもあって、メンバー間の相互触発が相当な強度で起こっており、どのアイディアがもともとどんなアイディアであり、またそれが誰によって提示されたのかも分からないほど議論が進展している。まるで四人が一つの集合的頭脳を形成しているかのようであり、これは研究会という形態で共同研究を進める場合の理想的な姿の一つではないかと思われる。 しかしその代わりに、急激に進んでいる議論の進度にメンバーが追いついていない側面があるかもしれない。個々のアイディアは深く掘り下げられてきているが、まだそれらが統合され、一つのまとまりをなすに至っていないのである。あまりにも興味深い理論や事例が毎回報告されているのだから、これは仕方のないことかもしれないが、そろそろ、それらを総合する時間や機会が必要になっているように思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、月に一度の研究回を続けていく予定である。 また、各メンバーが一人一つ論考を用意し、論文集を作ることを計画している。これは本研究会のメンバーにとってはさほど困難な課題ではないので、まずはこの論集の計画を具体化し、作業に入って行きたい。 ただ、研究会を重ねた後で、一人一人が論考を用意し、それをまとめて一冊の本にするというこれまでも繰り返されてきたありきたりのやり方にメンバーは満足していない。より革新的な研究成果発表ができないか、そのやり方を模索中である。たとえば、ネット上で自由に書き込み、書き換えができるプラットフォームを利用し、四人で一つの本を書くことはできないだろうかという案が浮上している。これだけ密度の濃い研究会を続けてくると、どれが誰のアイデアなのかは分からなくなってくるし、そもそもそういう区別をすることに意味がない。『自閉症原論』のような一冊の書物を四人で執筆できればすばらしいと考えている。ただ、この案はまだ検討中である
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