研究課題/領域番号 |
19H01184
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
堂囿 俊彦 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (90396705)
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研究分担者 |
中村 美智太郎 静岡大学, 教育学部, 准教授 (20725189)
松田 純 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30125679)
三浦 靖彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (40181854)
天野 ゆかり 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 講師 (60469484)
宮下 修一 中央大学, 法務研究科, 教授 (80377712)
青田 安史 常葉大学, 健康科学部, 教授 (90551424)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人間の尊厳 / 倫理コンサルテーション / 臨床倫理学 / ディグニティ・モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、ACP等を通じて自らの意向をあらかじめ示せる人だけではなく、示せない人についても、尊厳ある生を最期まで送ることができるように、在宅医療・介護現場において人間の尊厳を守る話し合いを実現・促進するための具体的な方策を示すことを目的としている。 初年度である今年度は、計画に沿って、主として以下の三点を実施した。 一つ目は、ドイツ臨床倫理学における「尊厳」概念の検討である。とりわけ尊厳の概念を重視する「再構成的臨床倫理のマインツモデル」を検討した。 二つ目は、前者のプロセスで明らかになった尊厳概念を、経験的な尊厳概念と比較検討する作業である。経験的尊厳概念に関しては、カナダの精神科医であるハーヴェイ・チョチノフによって示されたディグニティ・モデル(DM)を対象とした。DMは、カナダ人進行がん患者に対するインタビュー調査にもとづくものであり、患者本人が感じる「尊厳感覚」を中心にしており、尊厳感覚に影響を与える要素が詳細に示されている。しかし同時に、患者の視点を中心にしているために、ドイツの臨床倫理学において問題となっていた存在・生命や他者との関係という意味での尊厳が十分に捉えられていない。これらの尊厳を明らかにするには、尊重する側の視点から理解された尊厳に関して、インタビューを実施する必要が示唆された。なお、DMを検討する上では、DMにもとづいて考案されているディグニティ・セラピーを国内で実施している医療従事者にもインタビューを行った。 三つ目は、在宅医療・ケア従事者を対象にした調査の計画立案および倫理委員会への申請である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画通り、初年度は、ドイツ臨床倫理学における尊厳概念の検討、そしてこの概念と経験的な尊厳概念との比較検討を行った。しかし、ドイツ臨床倫理学における尊厳概念に関しては、文献を通じて入手できる情報が限定されるため、当初の計画では現地調査を予定していた。だが、調査予定者が不測の病気のために療養を必要とし、年度中の海外調査が実施できなくなった。しかし、海外調査は研究遂行上不可欠であるため、海外調査を、研究分担者の状態が安定すると予想される令和2年9月に延期して実施する予定とした。しかし、令和2年2月より始まった新型コロナウイルス感染症の拡大により、海外調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実施できなかった海外調査の代わりとして、綿密な文献調査を行った上で、ドイツ人研究者にメールで問い合わせを行ったり、ドイツで開催されたオンラインでのzoomシンポジウムに参加することにより、可能な限り正確な情報の把握に努めた。しかし、やはりこうした方法では限界があるため、日本国内での研究を進めつつも、研究期間中に海外調査を実施することで、現時点で得られた情報を補填する予定である。
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