研究課題/領域番号 |
19H01190
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
平井 靖史 福岡大学, 人文学部, 教授 (40352223)
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研究分担者 |
三宅 岳史 香川大学, 教育学部, 准教授 (10599244)
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (20303795)
村山 達也 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50596161)
合田 正人 明治大学, 文学部, 専任教授 (60170445)
安孫子 信 法政大学, 文学部, 教授 (70212537)
檜垣 立哉 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70242071)
藤田 尚志 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (80552207)
近藤 和敬 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90608572)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 時間 / 自由 |
研究実績の概要 |
第一主著である『意識に直接与えられたものについての試論』(通称『時間と自由』)において提示された持続概念、またそれに基づく複数の問題系について、分析哲学や関連諸科学との対話を通じて多面的な概念的検討を加えることで、従来見出せなかった理論的射程を探り出すのが今季の目的であったが、コロナ禍の事情により資金の一部について二度の繰越を行った。 その観点で企画された複数のイベントは、コロナ禍の影響により当初は延期を余儀なくされたが、いくつかのイベント(①『時間観念の歴史』合評会、②『試論』の思想史的ポテンシャルを探る、③Time, Freedom and Creativity)については順次オンラインで実施した。他方で、対面での重要性が高い記憶の分析哲学(CPM:記憶の哲学センター)との共同ワークショップ(④Remembering: Analytic and Bergsonian Approaches 2)は二年の延期を挟んで2022年10月に福岡大学にて実現させた。 時間の分析哲学で著名な青山拓央や科学哲学者である森田邦久を迎えた①、時間経験の哲学の泰斗バリー・デイントンと共同開催した③、記憶に関する世界的第一人者クルケン・ミカエリアンとの共同開催である④、2019年に開催した汎心論イベントの続編である⑤「なぜ汎心論はパフォーマティブなのか」など多くの交流を通じて分析哲学との対話は飛躍的に推進されたと言える。CPMとのワークショップはすでに第3回の開催を2023年11月に予定し、着実に軌道に乗ってきている。 人工知能研究におけるベルクソン哲学の重要性について人工知能学会の学会誌での連続対談企画(⑥「AI哲学マップ」、谷口忠大、三宅陽一郎)に参画し、最新の成果を学際的な場で共有した。 これらの活動を通じて、ベルクソンの持続概念の現代的な意義について多くの具体的な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「概要」に記載した通り、当初2020年度に予定していたイベントのいくつかは延期したが、繰越制度を利用することで最終的には2022年度までに実現を果たすことができた。 2020年3月に東京で予定していたワークショップ「ベルクソン『試論』の思想史的ポテンシャルを探る」は2021年3月に、また同じく2020年3月にロンドンにて開催を準備してきた二日間のワークショップ「Time, Freedom, and Creativity」は2021年7月にそれぞれオンライン開催した。 フランス・記憶の哲学センターとのイベントについては、複数の調整の末2022年10月に、福岡大学にて2019年に続き第二回目となる「Remembering: Analytic and Bergsonian Approaches 2」を開催した。分野が異なる場合には息の長い対話を通じてお互いの方法論を共有していく必要があるが、これが軌道に乗ることができたのはこのイベントによるところが大きい。 2019年に発足したグローバル・ベルクソニズム・プロジェクトの年次大会⑦について、2020年から公募など準備を進め、2021年11月日本主催でオンライン開催し、中国・韓国を含む世界各地の研究者を招いてアジア圏におけるベルクソン受容と今後の展望をめぐる全四日の国際会議を行った(その成果は、国際的なジャーナル「Bergsoniana」の特集号として2023年度に刊行予定)。同大会においては、日本哲学とベルクソンとの繋がりについて関心を抱く研究者が世界から集結し、京都学派の重要性にあらたな光を当てることができた。 上述の予定されていた計画に加えて、新たに人工知能研究者との対話や記憶の理論家、生物学や心理学の研究者との学際的な交流もスタートし、ベルクソン持続概念の射程に当初想定された以上の奥行きと広がりを見出しうることが明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
オンライン化によるメリットである機動性を駆使しつつ、より多面的に浮かび上がってきた持続概念の問題圏を、より解像度の高い仕方で彫琢していく。また、最終年度として総括的なシンポジウムを企画しているが、分担研究者たちとの会議を通じて、その人選についても多様性と包括性を踏まえ念入りに準備を進める必要がある。 記憶の哲学については、現在の科学的見地からの記憶錯誤の哲学的解明を行なっているドニ・ぺラン氏との共同研究を予定している。この論点はベルクソン自身も科学との対話で理論形成している点であり、多くの発展が見込まれる。 また、この期間中に若手を中心に新しい世界的動向として登場した「生物学の哲学」を通じてのベルクソンの再解釈の動きを踏まえ、カナダからガエターノ・ポステラロ氏、またフランスからマチルド・タアールを招いてワークショップを開く予定である。 さらに『試論』第一章で集中的に論じられる精神物理学批判は、現在の心理学の置かれている状況に光を投げ返すものであり、その観点からフェヒナーに関するイベントを行う予定である。 最後に、以上のような拡張ベルクソン主義の広がりを世界に問うべく、英語圏の出版社から論集の出版を進めていく。
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