研究課題/領域番号 |
19H01195
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
手嶋 英貴 龍谷大学, 法学部, 教授 (30388178)
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研究分担者 |
梶原 三恵子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00456774)
高島 淳 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (40202147)
井田 克征 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (60595437)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 祖霊 / ナーンディームカ / プニャアーハ / タントラ / ヴェーダ / ケーララ / 灌頂 / シヴァージー |
研究実績の概要 |
繰越しを行った2021年度研究計画の一環となるインド調査を、2022年12月末から2023年1月初にかけて実施した。この調査活動を基にしたものを含め、2021年度の研究実績として、以下のことが挙げられる。 (1)「ヴェーダ(とくにグリヒヤ)儀礼におけるターントリカ的要素」の調査:南インド・ケーララ州で様々な儀礼の冒頭に行われる「ナーンディームカ」という祖霊崇拝、およびその直後に、祖霊に関わることで生じた穢れを浄める「プニヤアーハ」という儀礼の実態を調査した。この二つの儀礼はコンビネーションをなし、ターントリカ儀礼とヴェーダ儀礼の両方で共通して行われるものとして、課題テーマに強く関連する事象といえる。 (2) 「王権儀礼でのヴェーダ的要素とタントラ的要素」の調査:ケーララ州の個人宅に所蔵される、南インド・旧トラヴァンコール王室に関わると目される「王灌頂儀軌」の内容調査を行った。また同儀軌の別系統写本がポンディシェリのフランス学院(IFP)にあることが分かったため、その画像を入手し、両本の比較校訂、および和訳の作成を進めた。 (3)「南インド以外の諸地域にみられる関連情報」の調査:ヴェーダ儀礼に起源をもつ王灌頂について、インド諸地域に残る儀軌文献の情報収集を行った。特に中世西インドのマラーター王国初代王・シヴァージー(1674-1680在位)が行った王灌頂の儀軌に注目し、内容調査に着手した。シヴァージーは在世中にプラーナ系の灌頂とタントラ系の灌頂の両方を挙行した。この両儀礼それぞれ儀軌があり、両者を比較することで、プラーナ系伝承からタントラ系伝承への変容における主なポイントを明確化することが期待される。これらの調査に基づく中間成果の公開として、研究分担者・高島淳が2022年度日本宗教学会学術大会で個人発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックの影響で、成果の導出に必要な現地調査の一部が未実施である。ただし、適切な繰越し延長措置により、研究期間全体としては計画に即した研究の実施が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
課題の繰越し延長期間(2023年度)を生かして、主に以下の研究を行う。 (1)「ヴェーダ的王灌頂からタントラ系王灌頂への変遷」:具体的には、トラヴァンコール王室に関わる「王灌頂儀軌」の校訂テキストと翻訳(英文)を作成し、適切な研究媒体において公開する。そのイントロダクションでは、同儀軌に記される儀礼の特徴、およびその儀礼形態が形成された歴史的経緯の概説を示す。 (2)「ナーンディームカおよびプニャアーハ儀礼の実態」:両儀礼コンビネーションの執行方法は、主催者の家系や儀礼の種別によって異なる。そうしたシチュエーションごとの相違を明らかにする。また、ケーララ州以外のインド諸地域で行われる両儀礼の実態についても情報を収集し、それとの比較を通じて、ケーララ州の儀礼が有する特徴の分析に生かす。本研究の成果も、適切な研究媒体において公開する。
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