研究課題/領域番号 |
19H01198
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
久保田 浩 明治学院大学, 国際学部, 教授 (60434205)
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研究分担者 |
深澤 英隆 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任教授 (30208912)
江川 純一 明治学院大学, 国際学部, 研究員 (40636693)
鶴岡 賀雄 清泉女子大学, 文学部, 非常勤講師 (60180056)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宗教理論 / 宗教思想 / 宗教史 / 宗教学 / 哲学史 |
研究実績の概要 |
狭義の宗教学において展開してきた学問的自己反省の歴史を踏まえ、現代における宗教思想研究の可能性を問う本研究は、近世以降、特に近代以降に歴史学、哲学・思想史、社会学、人類学、民俗学、心理学等の分野で生み出されてきた、「宗教」という事象についての理論化の試みを、その成立・展開・受容にかかわる思想史的文脈において検討し、さらに特定の宗教的伝統の自己反省から生まれた理論化(神学、宗学、教学等)も考察の対象としている。 研究初年度は、期間全体にわたる研究の前提および出発点となる作業を中心に行った。 ①対象とする理論家の選定作業。近世以降に「宗教」を理論化しようとしてきた宗教思想家・理論家の選定作業を年度上半期中に集中的に行い、第一回目の共同研究会(6月8日)における討議を経て確定した。 ②モデル分析と分析方法の検討。年度上半期に一回、下半期の二回の都合三回の共同研究会において、モデルとして四人の理論家を選び、その生涯・時代背景、そして宗教的出自等を確認した上で、その理論の特徴、同時代および後世に与えた影響を明らかにし、さらに現代的評価(現代において宗教思想研究を行うに際してその理論が持つ意義の解明)を行うことを予定していた。新型コロナ感染症拡大の関係で3月20日に予定していた第四回共同研究会は実施できなかったが、都合二回(7月26日、12月7日)の共同研究会において、M・エリアーデ、G・ジンメル、G・ヴィーコ、J・ヴァッハに関するモデル分析を詳細に検討した上で、理論的かつ方法論的枠組みの大枠を確認した。その詳細については延期となった第四回共同研究会にて論じる予定である。 ③本研究課題と密接に関連する研究が、少しずつではあるが海外においても散見されるようになっている。その国際的動向を把握し、国際的研究協力体制を整備するために、ドイツ、チェコ、イタリアで調査と共同研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、年度中に取り扱うべき思想家・理論家の選定を完了する予定であったが、その作業は年度上半期に集中的に行うことができたことで、その後の二回の共同研究会においてモデル分析を十二分に行うための時間的余裕を確保することが可能となった。したがって、当初の計画に比べて、期待以上のモデル分析が行え、以後の研究の方向性の見通しを比較的早い段階で立てることができた。一方で、そうした分析を踏まえて理論的・方法論的検討を行うはずであった第四回共同研究会が次年度に延期となった関係で年度全体の総括が不十分なままとなったが、それは次年度の早い段階で行う予定であり、研究の進捗状況を損なうものではない。また海外での共同研究は予定通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、昨年度中に行ったモデル分析の理論的・方法論的前提と枠組みを改めて批判的に練り直す(今年度上半期の二回の研究会(オンライン会議を予定)にて集中的に行う)。 そして今年度上半期中に、モデル分析の対象となり得る(つまり学問分野・宗教伝統・言語等の差異を考慮して、ほかの分析にとっても参照可能となり得る)他の理論家をさらに八名程度選び出す(年度下半期以降、具体的に分析を進めていくことを計画している)。その際特に、宗教学の従来の教科書的学説史叙述に登場してくる人物や狭義の宗教研究の枠を超えた諸分野(哲学・思想史、人類学、民俗学、社会学、心理学等々)の研究者と見なされている人々のみならず、歴史的な諸宗教(ユダヤ教、キリスト教、仏教、イスラーム等)の伝統の中で、自らの宗教伝統それ自体ではなく、それを自覚的に「宗教」として論じようとした人物を選定するように考慮する。 一方で、近世以降の特徴的な宗教理論および概念を、以上のように人物に特化して考察するのではなく、主題別に捉え直し、理論や概念自体の思想史的特徴、影響と受容、現代的意義を考察するための分析枠組みを検討する。 共同作業としては、研究代表者・分担者の個別研究と並行して、年度中に最低四回の共同研究会を行い、研究成果を相互に批判・検討しあい、メンバー全員の共同分析としてまとめ上げる。この共同作業は具体的には、本研究の最終的な研究成果として計画している『宗教理論事典』(仮称)の執筆(相互批評)と編纂の作業としても行う。当面はオンライン会議の形態で行うこととなるが、共同研究の遂行上、支障はないと考えられる。 また、国際共同研究および海外での研究動向の調査のために渡航することを見合わせざるを得ない状況が続く間は、必要に応じて、オンライン会議等でのコミュニケーションをとることも検討する。
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