研究課題/領域番号 |
19H01201
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 靖子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70262483)
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研究分担者 |
大平 徹 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20543474)
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
戸田山 和久 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90217513)
平田 裕美 (松井裕美) 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40774500)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 予測 / 予測的符号化 / モデル化 / 推論装置 |
研究実績の概要 |
近年の認知神経科学では、脳内の内的モデルが刺激の到来に先んじて、予測という仕方で知覚や感情を能動的に構成するという仮説が提唱されている。そのモデルは計算論的アルゴリズムにより表現されるが、実際に脳はそうした処理を行っているのかは依然として議論されている。本研究は、予測とは何か、予測を生み 出す推論の原理とは何かという問いを軸とし、また予測を裏切る要因として「偶有性」「揺らぎ」「遅れ(潜伏)」に注目することで、認知神経科学のモデルが 広く人間存在の理解のために有しうる説明力を検討することを目的とする。そのために、形態学、機械論、確率論、身体論という点で文学・数学・科学哲学史・ 美術解剖学・認知神経科学の立場から、予測を生み出す推論装置の概念史と今後の展開を中心課題とする。本年度は、年度末になって、コロナ渦のため、メンバーの何人かが予定していた海外出張が取りやめになり、資料収集などの点で多くの不都合が生じたが、まず7月の研究集会では研究計画全体のスケジュールと各自の役割分担を確認した。その後、メールによる議論などを継続する一方で、問題共有を図り、12月に研究集会を開催した。このときには、各自の研究の進捗状況を報告しあった。そして予測が引き起こす現象やそれに関する数理モデル、認知神経科学より提起 されている予測的符号化の仮説を照合させつつ、従来哲学において表象されてきた「数学なるもの」とはなにか、という問いを立て、それが人文学的にどう「翻訳」され受容されてきたかなど、さまざまな観点から議論を展開した。このようにして、「予測を生みだす推論装置」という本プロジェクトの核となるテーマについて問題提起を活性化しつつ、各自の分野の特性を確認し、相互理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度末になってコロナ渦のため、計画していた海外出張が一部取りやめになるなどの予定外の支障が生じたが、それまでは順調に研究集会を開催することができた。最初の研究集会では、各自の役割分担を確認し、それぞれの分野からの問題提起を検討し合った。結果的に、次年度にずれ込んだものの、当初予定していた回数の研究集会を開催することができた。それにより、すべてのメンバーがそれぞれの報告を一巡することができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ渦の終息について、依然として見通しが立たないものの、オンラインを併用した研究集会はほぼ問題なく開催することができるような態勢が整ったため、当初の予定通り、研究期間の二年目には、メンバー全員がそれぞれある程度のまとまった研究報告をすることにより、互いの研究成果を橋渡しする形で議論を進め、論集の企画の構想について議論を進める。
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