複合国家性に留意する近代イギリス思想史研究─遠心力と求心力の統御の観点から─

2022 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H01202
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 竹澤 祐丈 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (60362571)
• 研究分担者: 岩井 淳 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (70201944) ; 木村 俊道 九州大学, 法学研究院, 教授 (80305408) ; 桑島 秀樹 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (30379896) ; 森 直人 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 教授 (20467856) ; 佐藤 一進 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (00554312) ; 武井 敬亮 福岡大学, 経済学部, 准教授 (90751090) ; 中島 渉 明治大学, 商学部, 専任教授 (20453962) ; 安武 真隆 関西大学, 政策創造学部, 教授 (00284472)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 複合国家イギリス / アイルランド / ポーコック / 歴史叙述 / 思想史 / スコットランド / イングランド / ウェールズ

研究実績の概要

本年度も、新型コロナ・ウィルスの蔓延による海外渡航制限などにより、各自が文献分析を中心とする研究活動を行った。研究の進捗管理や意見交換のための研究会は、オンラインにより複数回開催した。
本年度も、複合国家イギリス内部の各地域の統合に関する同時代的議論の相互関係とその処方箋の諸相や、通時的な複合国家の通時的結節の変化の分析を行った。また研究プロジェクト全体の成果の取りまとめの一環としての３名のメンバーによる研究報告を、日本イギリス哲学会の公募セッションで行った。そこでは、以下の3点を主張した。第一に、思想史研究における複合国家論を先導するポーコックの議論を詳細に分析し、その重点が、イングランド中心的なブリテン国家・社会の形成・維持の動きの解明にあることを明確化した。第二に、ロックの議論において、複合国家に関する歴史叙述が戦略的なされていること、第三に、モリニューのアイルランド統治論における王権の位置づけが、その後のアメリカ独立期の議論との類似性や影響関係の解明からも分析可能であることを説得的に提示した。
上記に加えて、研究プロジェクト全体の成果は以下である。①複合国家の事実認識とその思想的な概念化とを関連させて分析することで、16世紀から18世紀のイギリスにおける複合国家性を維持する思想的な努力と工夫の在り方を通史的に把握することができた。②過去の特定の統合事例や統合論（ウェールズ合同や愛併合など）が、後代の統合議論、すなわち17世紀後半の名誉革命期、18世紀初頭の英蘇合邦期、ハノーヴァ継承期の議論などにおいて、典拠的な重要性を持つ点の把握や統合思想の歴史的な系譜を素描することができた。

現在までの達成度 (段落)

令和4年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和4年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] 英米のピューリタニズムとコモンウェルス (2023)
  • 著者名/発表者名: 岩井淳
  • 雑誌名: ピューリタニズム研究 巻: 17 ページ: 3～15
• [雑誌論文] アイルランドの絶景、描かれる狂気の友情 (2023)
  • 著者名/発表者名: 桑島秀樹
  • 雑誌名: キネマ旬報 巻: 1913 ページ: 55～57
• [雑誌論文] （書評）ステファン・コリーニ著、近藤康裕訳『懐古する想像力―イングランドの批評と歴史』 (2023)
  • 著者名/発表者名: 中島渉
  • 雑誌名: イギリス哲学研究 巻: 46 ページ: 55～57
• [雑誌論文] 政治思想の「振舞い」─統治のアートとシヴィリティをめぐって (2022)
  • 著者名/発表者名: 木村俊道
  • 雑誌名: 政治思想研究 巻: 22 ページ: 96～122
• [雑誌論文] 報告・広島大学大学院人間社会科学研究科設立記念セミナー第１回「美術館×広島大学×アーティストの共演 : 感性知を活かす市民づくり・街づくり（人間総合科学プログラム主催オンライン・シンポジウム）」 (2022)
  • 著者名/発表者名: 桑島 秀樹、淺野 敏久、藤岡 亜弥、松田 弘
  • 雑誌名: 広島大学大学院人間社会科学研究科紀要. 総合科学研究 巻: 3 ページ: 29～47
  • DOI: 10.15027/53570
• [雑誌論文] 山陰／出雲で覚醒した ハーン＝八雲の「痛苦反転」的な感性デザインの文化力 ―バーク崇高美学を参照しつつ (2022)
  • 著者名/発表者名: 桑島秀樹
  • 雑誌名: 2022 International Design Trend Symposium and Forum Proceedings (Korean Society Design Trend) 巻: 2022 ページ: 28～29
• [学会発表] ブリテン近代史研究の3つの焦点―千年王国、複合国家、歴史教育 (2023)
  • 著者名/発表者名: 岩井淳
  • 学会等名: 岩井淳先生退職記念シンポジウム
  • 招待講演
• [学会発表] 『イニシェリン島の精霊』が描く、人間、自然、そして芸術を語り尽くす（聖パトリック祭2023特別企画アフタートーク） (2023)
  • 著者名/発表者名: 桑島秀樹
  • 学会等名: 広島・アイルランド交流会
  • 招待講演
• [学会発表] ウィリアム・モリニューのアイルランド統治論における複合性認識 (2023)
  • 著者名/発表者名: 武井敬亮
  • 学会等名: 日本イギリス哲学会第47回研究大会（セッション「思想史研究における複合国家論の射程」）
• [学会発表] ロック『統治二論』におけるスコットランド (2023)
  • 著者名/発表者名: 安武真隆
  • 学会等名: 日本イギリス哲学会第47回研究大会（セッション「思想史研究における複合国家論の射程」）
• [学会発表] J・G・A・ポーコックの複合国家論の特徴とその可能性 (2023)
  • 著者名/発表者名: 竹澤祐丈
  • 学会等名: 日本イギリス哲学会第47回研究大会（セッション「思想史研究における複合国家論の射程」）
• [学会発表] 英米のピューリタニズムとコモンウェルス (2022)
  • 著者名/発表者名: 岩井淳
  • 学会等名: 日本ピューリタニズム学会第17回研究大会
  • 招待講演
• [学会発表] 近世史から「歴史総合」を考える (2022)
  • 著者名/発表者名: 岩井淳
  • 学会等名: 東海中学・高校土曜市民講座
  • 招待講演
• [学会発表] 梅田百合香『ホッブズ リヴァイアサン』に関するコメント (2022)
  • 著者名/発表者名: 竹澤祐丈
  • 学会等名: 第258回 経済学史研究会（関西学院大学）
• [図書] 啓蒙思想の百科事典 (2023)
  • 著者名/発表者名: 日本18世紀学会『啓蒙思想の事典』編集委員会（編）（森直人と安武真隆の執筆部分）
  • 総ページ数: 714
  • 出版者: 丸善出版
  • ISBN: 9784621307854
• [図書] 比較革命史の新地平 (2022)
  • 著者名/発表者名: 岩井 淳、山﨑 耕一（編著）（岩井淳の執筆部分）
  • 総ページ数: 352
  • 出版者: 山川出版社
  • ISBN: 978-4-634-67254-3
• [図書] 複合国家イギリスの地域と紐帯 (2022)
  • 著者名/発表者名: 岩井 淳、道重一郎（編著）（岩井淳と竹澤祐丈の執筆部分）
  • 総ページ数: 376
  • 出版者: 刀水書房
  • ISBN: 978-4-88708-476-6