研究課題/領域番号 |
19H01210
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
八木 君人 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (50453999)
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研究分担者 |
伊藤 愉 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 非常勤研究員 (00816556)
大石 雅彦 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10160417)
安達 大輔 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (70751121)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロシア・アヴァンギャルド / 音の複製技術 |
研究実績の概要 |
周知の通り、19世紀の最後の四半世紀から20世紀の最初の四半世紀にかけて、たとえば、音の複製技術や電話やラジオの発明、初期電子音楽器等の登場、都市の機械音・人工音の増大等、人々を取り巻く音環境というのがそれ以前の時代に比べて大きく変化した。20世紀前半のロシア・ソ連において、そうした「音」に対する新しい観念・イメージが文化(とりわけ芸術や人文学の分野)のなかでいかに受容され、それらが新たにどのような文化的文脈を形成していったかを考証するのが本研究の課題である。 研究分担者や研究協力者間における個別の研究会・意見交換等はおくとして、本年度の成果発表として具体的に挙げられる大きなものとしては、第69回日本ロシア文学会定例総会・研究発表会におけるワークショップ・パネル発表「ロシア・アヴァンギャルドのサウンドスケープ」がある。そこでは、イリヤ・ズダネーヴィチをはじめとするロシア・アヴァンギャルド詩と音声の複製技術との関係(八木君人)、20世紀前半の音楽における多様な楽音の諸相(梅津紀雄)、都市文化や機械文化の象徴としての「ノイズ」に対して敏感に反応した1920年代の演劇界の状況(伊藤愉)、最初期サウンド映画におけるテクノロジーを媒介にした音・ノイズの用いられ方の特徴(大平陽一)等について報告された(詳細は以下のURLにある本ワークショップ報告要旨(326-333頁)を参照されたい: http://yaar.sakura.ne.jp/danet/robun/RLL52.pdf )。個々の報告における具体的な事例もさることながら、ロシア・アヴァンギャルドの時代の諸芸術における「音」の問題をジャンル横断的に検証することにより、新しい「音」やそのイメージの問題が、当時の芸術文化においてきわめて重要な契機としてあったことを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は概ね計画通りに順調に進んでいたが、2020年初めからはじまる新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、2020年3月に行う予定だったモスクワおよびペテルブルクでの現地調査が不可能となった。したがって、進捗状況は「やや遅れている」とする。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大の状況は先行きが見えず、現地調査の目途が立たないため、ロシアにおける研究協力者との打ち合わせや意見交換に関しては、遠隔ビデオ会議を用いることによって行うが、当時の電子音楽器の調査等、どうしても現地調査を行う必要があるものもあるため、それについては様子を見るしかない。そのため、国内でできる調査・研究に重点を置くように変更する必要があるが、具体的には、文献資料に関しては、日本国内からでも収集できるものについては可能な限り収集することに努め、その読解・分析に次年度以降の力点をおくかたちに変更する。
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