研究課題/領域番号 |
19H01212
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木俣 元一 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (00195348)
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研究分担者 |
佐々木 重洋 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (00293275)
駒田 亜紀子 実践女子大学, 文学部, 教授 (00403866)
水野 千依 青山学院大学, 文学部, 教授 (40330055)
秋山 聰 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50293113)
赤江 雄一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50548253)
奈良澤 由美 城西大学, 現代政策学部, 教授 (60251378)
森 雅秀 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90230078)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 図像学 / キリスト教 / イメージ / 物質性 / エージェンシー |
研究実績の概要 |
キリスト教美術におけるイメージの意味と物質性の関係を対象とする新たな図像学の構想を具体化することを目的として、何らか神格的存在、現実や自然を超越する者、あるいは祖先のような現世における不在者などを人間がいかにして想起し、交渉するかという方法とそのあり方を明らかにするという共通の問題を設定し、物質性(マテリアリティ)を主要な観点として文化人類学系の研究者と美術史系の多数の研究者により幅広く共同研究を行うことで中間的成果を論文集の形で2021年度末に計23編の論文を含む共著論文集の形で刊行することできた(木俣元一・佐々木重洋・水野千依編『聖性の物質性 人類学と美術史の交わるところ』三元社)。研究代表者が宗教と物質性に関わる序論を執筆し、分担者から佐々木が文化人類学分野における物質性のテーマに関する基調論文、水野が美術史分野における物質性のテーマに関する基調論文を執筆し、新たな図像学の構想に向けて、本研究課題の遂行と平行して、図像学(イコノグラフィー)という方法論の課題と可能性に関して、とくに本研究で重点を置く物質性を中心として人類学と美術史の分野を中心としてヒストリオグラフィ―の整理並びに確認を行うことができた。空間的関係性、時間的関係性、可視性/不可視性、開示/隠蔽、媒材/素材/媒体、五感への働きかけ、装飾と文様、技術・技法・テクノロジー、文字、発話・発声、消去と破壊、身体・現前・不在、動物や植物などの生命体などの論点を立てて考察を進め、1.経験・思考・想像力、2.人格・エージェンシー・生動性、3.聖性・奇跡・交渉、4.空間・環境・設え、5.儀礼・パフォーマンス・演出という構成により、本科研費の研究組織を越えた分野横断的で多領域に渡る論文を系統的に配列した。研究代表者及び研究分担者は、研究成果を雑誌論文、図書等を通じて公表を進め、事例研究に関する資料収集も進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者と研究分担者がオンライン形式で協議し、全員が研究の方向性を十分に共有し、超越的存在と人間との交渉において人間の身体を含む物質的な事物が担った役割に注目する「聖性の物質性」という共通の問題意識のもとに、2021年度末に中間的成果を分野横断的な論文集の形態で刊行し広く社会に向けて発信することができた。その論点や内容などの具体的な方針を固め考察を順調に進めることができたことを通じて、最終年度(2023年度)における論文集の形態による研究成果公表に向けた準備が大きく前進することとなったことは評価に値する。また代表者及び各分担者が具体的な事例に基づく研究を進めることができており、成果の公表数はさほど多くはないが、それでもかなりの数の実質的な成果を挙げることができた。以上のように、今年度進めることができた様々な研究活動の成果については、2022年度以降においても、さらに数多く公表できることが期待される状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
新たな図像学の構想に向けて、図像学(イコノグラフィー)という方法論の課題と可能性を可視化し、とくに本研究で重点を置く物質性を中心として人類学と美術史の分野を中心として19世紀から現在に至るヒストリオグラフィ―の整理を踏まえつつ、今後研究を発展させるために理論的考察を深化させることが不可欠となるだろう。2022年度以降は、2021年度におこなった、とくにイメージに限らず多様な事物(人間も含む)の物質性(マテリアリティ)が関与する多種多様な契機(空間的関係性、時間的関係性、可視性/不可視性、開示/隠蔽、媒材/素材/媒体、五感への働きかけ、装飾と文様、技術・技法・テクノロジー、文字、発話・発声、消去と破壊、身体・現前・不在、動物や植物などの生命体等)において、宗教的経験と一体化して様々な意味が産出/豊富化される様態やプロセスを明らかにすることに重点を置きつつ本研究の中間的成果を論文集としてまとめ刊行した成果をさらに発展させていきたい。さらに最終年度(2023年度)終了時までには最終的な研究成果をまとめられるよう、段階的に準備を進めていくことを予定している。そのためには研究代表者と研究分担者がオンライン形式により活発に打ち合わせを行うことが必要であろう。
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