研究課題/領域番号 |
19H01219
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
小鍛冶 邦隆 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90463950)
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研究分担者 |
野平 一郎 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (60228335)
鈴木 純明 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (20773906)
折笠 敏之 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80751479)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 作曲方法論 / コンピュータ音楽 / ミクスト音楽 / コンピュータ支援作曲 / 演奏 |
研究実績の概要 |
初年度は、4月下旬にIRCAM(「フランス国立音響音楽研究所」)から著名な研究者・教育者のミハイル・マルト氏を東京藝大作曲科に招き、コンピュータ音楽についての研究会的な性質の強いワークショップを数日間に渡って開催することにより開始した。CAO(「コンピュータ支援作曲」)やミクスト音楽の一般的な状況を押さえつつ、特に多くの先進的な作曲家らによって近年追求されている今日のコンピュータ音楽の方法論的な水準の一端を詳細に扱うことで、発展的に創作モデルとして扱う可能性を確認した。最終日には、大学院生作品の試演と公開レッスン、またマルト氏自身によるフルートと電子音響による作品の演奏も行われた。 6月には、世界的な作曲家で、既に歴史的に重要なコンピュータ音楽関連の創作でも知られるフィリップ・マヌリ氏を研究分担者の野平が招き、氏の作品に関する特別講座を開催した。 11月には、研究代表者の小鍛冶が、本研究課題と関連して構想中のオペラブッファの序曲にあたるオーケストラ作品を指揮し、研究分担者の鈴木作品と合わせて初演した(東京交響楽団ほか、東京オペラシティ)。 12月には、4月に続いてIRCAMから招聘した講師・電子音楽家ジャン・ロシャール氏による研究会的な特別講座を数日間に渡り開催したが、そこでは電子音響音楽の基本に立ち返り、古典的な音の合成について、氏の専門である物理モデルまでを取り上げ、本研究課題の対象として扱う事項の整理を試みた。4月同様に、最終日には大学院生による作品試演会が開催され、またロシャール氏による電子音響音楽作品のパフォーマンスも行われた。 研究開始に当たり、比較的大規模に制作等の環境を整備することも初年度の主要な目的の一つとしたが、その一例としては、関連の学術論文や技術者等の意見、最新情報等を参考に、最大24チャンネルのスピーカーによる試行的な制作環境を整備したことが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同研究グループによる、本研究の前提となる研究課題(研究代表者:野平一郎、2016年度~2019年度基盤研究(B))からの連続性と発展的な展開という文脈において、(1)より今日的で高い水準・次元で扱うべきコンピュータ音楽関連の諸事項(創作「モデル化」の尺度等)の可能性の検討と、(2)それらを扱う上で研究期間全般に渡り必要となる環境を整えることが初年度の重要課題であったが、特に後者(2)についてはおおむね達成しつつある。 先述のマルチチャンネルの制作環境などがそれに当たるが、主にIRCAMの研究者や技術者の意見等も参考に、適宜、各方面の先行研究も参照しての試験的なプログラム制作等を通して段階的に検証を重ね、コンピュータを援用しての創作・研究環境として比較的大きな規模で新規に機材を導入して整備されたものである。 前者(1)については、当該年度海外から研究者を招聘して開催した研究会を通して、いくつかの重要事項を掘り下げて検証を行なった(特にミクスト音楽において近年用いられているリアルタイムのデータの解析手法とその作品への具体的な応用方法など)が、今後、上述の新規に整えた環境を利用しての試行的な創作や、実作において実現している事柄の分析・方法論的な水準での検証等の制作・演奏、及び教育への応用(「暫定的」な規範化の可能性等)に向けて、具体的な道筋・課題を示すまでには至っている。 次年度以降、より多岐に渡って深く掘り下げての検討が必要であるが、それらの検証と段階に応じての何らかのアウトプットの見通しを示すことが本研究の期間全般に渡っての目的とも言える。 以上のことから、初年度としてはおおむね順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、必要な機材やソフトウェア環境等を整備し、適宜、関連の研究者や技術者の意見も求めつつ、初年度の準備を前提とした具体的な課題設定に基づく諸方法論研究、及びそこから可能な試行的創作モデル設定、進捗状況に応じた適当な時期におけるその段階で可能な水準の何らかのアウトプット(試作、試演の計画)が見込まれる。 具体的には、コンピュータを用いた創作における多様な尺度の設定と、それを応用した作曲作品のモデル化(一例を挙げれば、上述のマルチチャンネル環境でのスピーカー設置のヴァリエーションや、パンニング方法等の理論的な水準での検討等)、作曲専門領域における現代的な水準でのコンピュータ援用による「生成」的(例えば機械学習的な手法に基づくものも含め)な創作モデル(ミクスト及びCAOの両面)等について、方法論的な水準での検討や試作を計画する。 基本的には研究課題最終年度における比較的大規模な成果発表の場を設定することを念頭に、そのための試行または試演という位置づけにおいて(公開、非公開を含めた)機会を計画する。
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備考 |
東京藝術大学音楽学部作曲科で当該年度に開催した、関連の研究会的な性質の強い特別講座・ワークショップ及び試演会のwebサイトへのリンクを記載。
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