研究課題/領域番号 |
19H01219
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
小鍛冶 邦隆 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90463950)
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研究分担者 |
野平 一郎 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (60228335)
鈴木 純明 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (20773906)
折笠 敏之 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80751479)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 作曲方法論 / 現代音楽技法 / コンピュータ音楽 / ミクスト音楽 / コンピュータ支援作曲 / 演奏 |
研究実績の概要 |
前年度(本研究課題初年度)に海外から研究者、作曲家等を招聘して開催した研究会における確認・検証や、関連の先行研究及び研究者・技術者の意見等も参考に導入した設備・備品(特にspatialization関連の様々なパラメータ設定への対応と、数理的なシステム等を用いた生成的な創作モデル研究のための環境整備等)を前提として、引き続き作曲専門領域の観点から、現代音楽技法としてのコンピュータ音楽の創作・実演の方法論的水準での整理を試みた。 創作や実演(演奏)に際しての様々な尺度・パラメータにおいて典型的な技法の確認やその教育研究の水準における資料整理などを継続したが、具体例としては、センサーからの入力による音響生成・合成のためのパラメータ制御モジュールの教育的水準の設定(やや工学的な専門性が高くなるが、発展的にセンサー一般への応用可能性を持つ)や、CAO(「コンピュータ支援作曲」)による楽譜化に際しての教育研究的・実際的な類型整理等が挙げられる。 当該年度10月末には、IRCAM(「フランス国立音響音楽研究所」)からコンピュータ音楽デザイナー/作曲家のJ.M.フェルナンデスを招聘しての研究会的な性質の強い特別講座を1週間に渡って開催することを計画した(氏が研究している"AntesCollider"についても取り上げられる予定であった)。また、その直後11月初旬と翌2月と2度に渡る公開演奏会(第4回及び第5回「REAMコンサート」)を想定し、海外重要作品の分析・研究や、現代的な水準でのコンピュータ使用を伴う実演(演奏)を通して、方法論的な水準でのモデル設定の参考事例としての検証を行うことを計画したが、これら当該年度に予定した研究会や演奏会等の機会は、全てCOVID-19感染拡大の影響により中止となった(予備的に関連作品や論文等を参照するにとどまった)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度は方法論的な水準設定に基づく環境整備を中心に研究を進めたが、敢えて初年度から性急に成果発表機会を設定せず、次年度以降にそういった機会を複数回持つことを予め想定して、本研究課題の期間全体のスケジュールを計画していた。2年目となる当該年度は、経過報告としての成果発表機会の開催を年度内に2度に渡って予定していた(上述、11月、2月)が、コロナ禍の諸状況を鑑み、そのいずれについても中止せざるを得ないこととなった。 また、IRCAMから招聘予定だったJ.M.フェルナンデス氏の研究会(10月末)についても、同様に中止となったが、同講座の初日には、本研究組織を立ち上げた2016年度以来定例化しつつある大学院生作品の試演(教育研究水準での進捗・成果を具体的に可視化する)が、そして最終日には、研究分担者の野平の作品について、そのコンピュータによるレアリゼーションを担当したJ.M.フェルナンデス氏と作曲者自身とによる作品分析が行われる予定であった。 そうした機会が開催不能になったという点では、本研究課題においてもコロナ禍の影響は極めて甚大で、今後しばらくは同様の状況が継続するものとも見込まれる。年度途中からはそういった機会の代替となる方策の検討を行ったが、この「非常時」における研究者(代表・分担)個々人の諸事への対応状況を鑑み、年度内の具体的な機会の新たな設定は見送らざるを得なかった。そういった観点から、全体としては「やや遅れている。」ものと評価する。 (一方で、方法論研究に基づく教育研究的水準の設定等については比較的順調に進展していること、また状況・条件が整えば研究成果に基づく一定水準の創作・発表が可能であることを合わせて勘案すれば、研究自体は概ね順調に進展しているものとも評価できる。)
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる次(2021)年度については、引き続き、作曲専門領域の観点から有効な作品創作の文脈に連なる方法論的モデル(様々な尺度・パラメータに基づく)の設定を視野に、同時にまた教育研究的水準での資料整理や環境整備、資料収集等を進めつつ、進捗状況に応じた創作・演奏を計画する。それに際しては、先述の通り、向こうしばらくはCOVID-19感染拡大の影響が継続することが見込まれるため、(公開、非公開にかかわらず)演奏会、あるいはそれに準じた何らかの手段による研究成果の具体的な形でのアウトプットを検討する。 また、本研究課題周辺の問題領域(いわゆる「コンピュータ音楽」関連分野)は、作曲専門領域における同時代的な創作という観点において非常に重要な分野の一つであり、本研究期間の終了後もその成果を十分に踏まえつつ、関連の極めて多岐に渡る分野の「日進月歩」の研究開発状況を常時把握し、調査・研究を重ねて取捨選択しながら、その創作・分析関連の諸方法論自体を更新し続ける必要性のある領域でもある。最終年度には、そういった継続性という観点からも、今後の中・長期的な見通しを含めた様々な検証・検討を行う予定である。
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備考 |
コロナ禍による諸影響により、当該年度に計画していた研究会や演奏会などの全ての機会が中止された。
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